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Episode 02 〜事件〜

 〜・〜
プルルルル.... 沙織からの電話だ。もうすぐ中間だというのに暇な人だ。

「もしもし?沙織?」

「ちょっと!重大ニュース!やばいよ!雪乃が自殺した!ベランダから飛び降り自殺!コンビニに行こうとしたら雪乃のマンションの周りにめっちゃ警察とかいて、何だろッて思って見てたら雪乃のお母さんが号泣しながらほら、あの倒れた人運ぶときに使うやつに抱きついてて、で、聞いたら飛び降りたんだって」

彼女は一息にまくし立てた。なに、それ。今は担架と言う単語が出てこなかったことを突っ込んでいる場合ではない。

「マジ、で?そんなことってある?」

「ねー!ちょっと、明里にも連絡するから切るよ!」

「う、うん」

どこか嬉しそうな声だった。友達なんて、そんなもんか。

それにしても友達が自殺するなんてドラマみたい。

でも、腑に落ちないことがある。私はベッドに潜ってからもずっと考えていた。あの子は自殺する理由なんかないはず。いじめられてもいなかったし成績もよかったし、すごい良い彼氏もいていっつものろけてた。なのに、なんで?

私はふと、机の上においてあった作りかけのミサンガが目に止まった。そうだ。



・〜・〜
登校初日から一週間も立たずに事件が起こった。

生徒が自殺なんてどうなっているんだ。私が来てから数日の様子では、普通の子だった。

ただ、あの子の気持ちもわかる。死にたくなるよね。周りにあわせておくる毎日なんか面白くないしあーもう死んじゃってもいいかななんて思わないでもない。ただ、死んでもそれは世界から一人だけ消えるだけで、結局この世界は何も変わらない。

なら、もう少し生きていたほうが確実に得だ。いくらいじめられてても、いじめていた当人たちは最初の何年かは大変かもしれない。退学になったり、もしかしたら罪悪感も出てくる人だっているかもしれない。でも、その人達は何年かしたら罪の意識も薄れ、忘れてしまう。だから、自殺が一種の復讐と言うのは間違いだ。

などと色々考えたが彼女はいじめられてなさそうだったし、多分関係ないだろう。ただ疲れただけでこの世界から一人退場することを決めたのだろうか。多分何か他に理由があるはずだ。

知りたい。そのためにはあのうるさくて面倒くさいグループに関わることも大切かもしれない。

   〜・〜
職員室には生徒立ち入り禁止の札。ホームルームに五分遅れて来た波平さんは、校長と一緒だった。波平さんは寝ていないのか、疲れきった表情だった。

「えー、知っている人ももういるかもしれませんが、昨夜、このクラスの雪乃さんが、えー、あの、」

すると今朝から昨日見た雪乃のマンションの周りの様子を電話で聞いた時よりもかなり盛りながらハイテンションで話していた沙織が

「もうみんな知ってるから先生言いにくいなら言わなくていいよ。雪乃はマンションから飛び降りた、そうでしょ?」

と言った。

普段は敬語にうるさい先生が救われたような顔をしている。相当言いにくいのだろう。

今日一日はみんな授業どころではなかった。みんな雪乃の突然の死に興奮していた。もちろん悲しいとは言っているが、これは本音と建前の建前の方だ。本音ではこの非日常な出来事を楽しんでいる。

明里なんか完全に親友をなくした悲劇のヒロインになりきり、そんな自分に酔っている。影で雪乃のことを散々に言っていたくせに本当に都合のいい人だ。まあ私と大差ないのかもしれないけど。

  ・〜・〜
  なんか大変な一日だったと思いながら帰り支度をしていると、いつもクラスの中心のグループにいる安藤可奈がみんなの誘いを断り一目散に教室を出た。私と同じことを考えている人がいたのかもしれない。とりあえず尾行して見よう。彼女は思ったより歩くペースが早くてついていくのに一苦労したが、なんとか目的地までついていくことができた。やっぱり。着いた先はあるマンションの304号室。下村雪乃の家だ。

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