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突然奪われた日常

俺は、目が覚めると全方面が真っ白な部屋で、椅子に座らされていた。なぜか目の前にはパソコンのディスプレイが設置されていて、突如としてそのディスプレイに中年男性の顔が映る。男は、
『こんにちは。瀬名晴彦さん。私は今後あなたの担当をさせていただきます烏賊川と申します。今後10年間ほどあなたにはパラレルワールドで生活してもらいます』
と言う。パラレルワールドォ?なんじゃそりゃ。俺が反論しようと口を開くと、
『ちなみにあなたの声はこちらには届きません。信じ難いかもしれませんが、本当に10年間パラレルワールドで生活してもらうしかありません。これは国家事業なんです』
と男が言う。国家事業ね。国がそんなことする理由があるのか?男が、
『国がそんなことする理由あるのかと思いますよね。私も正直そう思います。でも、私も総務省の職員です。上の命令には従うしかありません。それでは、あなたがこれから暮らす地域は、ちょっとした大都市です。あなたが普段使っているPC・スマートフォン・タブレット端末などは全く同じものが用意されています。あなたの部屋も再現されています。まず、基本の資金として、1000万円があちらの銀行の口座に入金されます。ゲームも好きなようにできますから。あなたの所有物、まあご両親の物は別として全部同じものが用意されています。楽しんでいらっしゃい』
と言った途端、映像はプツリと切れる。すると、俺は椅子からずり落ち、床に突っ伏した。

意識が戻ったのは、自室、というか俺の部屋が再現されている部屋だった。PCデスクには、デスクトップPC一台と、ノートPCが二台、タブレットPCが一台、俺の愛用しているスマートフォンが置いてある。俺はひとまずスマートフォンとノートPCを持ち、部屋の扉を開ける。すると、目の前には—。
「・・・・え?」
としか言いようがなかった。3人の男女が目の前で悠然と座っているのだ。一人で暮らすもんだとばかり思っていた。3人も俺と同じようなことを思ったようで、怪訝な表情をしている。3人の中の一人だけの男が、
「ど、どちらさんで?」
と言う。俺は、
「・・瀬名晴彦ですが。あなた方は?」
と言った。3人が同時に、
「忽那健佐です。高2です」
「宮苑晴海です。こ、高2です」
「代永可南子です。高校二年生です」
と言う。忽那健佐、宮苑晴海、代永可南子・・・。俺は、
「俺も高2。全員同学年か。高校は?」
と尋ねる。3人は同時に、
「経徳学園高等部です」
「経徳学園高等部です」
「経徳学園高等部です」
と言う。経徳学園高等部・・・俺も同じだ。俺は、
「ひとまず2つ共通点があったね。同学年・同じ学校。ほかには・・」
と言う。身長とかかな。俺は、
「身長で共通点とかないかな。身長差が何cmとか」
と言う。忽那が、
「俺は175cm」
と言う。宮苑が、
「私は162cmです」
と言った。続いて代永が、
「私は・・・149cmです」
と言う。忽那が、
「で、瀬名さん。あんたは?」
と言う。俺は、
「俺は・・・188cm」
と言う。宮苑が、
「じゃあ、全員の身長差を計算すると・・・瀬名さんと忽那さんとの差が13cm。忽那さんと私の差が13cm。私と代永さんの差が13cm。瀬名さんと私の差が26cm。忽那さんと代永さんの差が26cm。と言う感じですね」
と言う。各々の身長を引くとそういう数値が出るか。13cm差、26cm差があることが基準なわけか。だが身長162cmの女子高生はいくらでもいる。やはり高校が同じだからか。いや、まだあるんじゃないか?俺は、
「学校でのクラスは?」
と尋ねる。彼らは同時に、
「2年B組」
「2年B組です」
「2年B組ですが」
と言う。すると、突如、TVの画面に文字が現れる。そこには、
‐あなた方にはこちらの世界で運転免許証が支給されています。リビングルームのローテーブルに4つの箱があります。自分のイニシャルの記してある箱を取りなさい。中には預金通帳、免許証、クレジットカード、トレインカードが入っています。確かめなさい‐と表示されていた。

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