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第33話 新しい侍女

 王宮中にラウール王子らしい人物が現れたと言う話が広がり、慌ただしく、しかし密かにエリーシアが姿を消した翌日。シェリルはミレーヌの呼び出しに応じて、人の姿に戻って彼女の私室に出向いた。

「シェリル。新たにあなた付きになってくれる侍女が、先程ファルス公爵に連れられて来て、後宮内で手続きを済ませました。若いけどしっかりしているとの、公爵からのお墨付きよ。カレンには女官長に復職して貰って、この機会に彼女にあなたのお世話をお願いしようと思っています」
 そう言われて、シェリルは申し訳ない気持ちで一杯になった。

「そうですよね。カレンさんは女官長ですから、ただでさえ忙しいのに大変でしたよね? 私は本当に大丈夫ですから」
「そう言って貰えると助かるわ」
 そこでカレンが二十代半ばと思われる女性を、隣室から連れて来た。

「王妃様、シェリル様、お待たせしました。こちらが本日より後宮勤務になりますソフィアです。今日はこれから諸事項の説明を致しまして、明日よりシェリル姫付きの侍女として、正式に勤務して貰う事になります」
 カレンがそう説明し終えると同時に、その女性が一歩前に出て優雅に一礼した。
「ファルス公爵家から派遣されて参りました、ソフィアと申します。王妃様と姫様に早々にご挨拶が適い、光栄でございます」
 その微塵も動じない、しかし礼は逸していない立ち居振る舞いに、ミレーヌが満足気に頷く。

「さすがはファルス公爵ご推薦の方ですね。シェリルの事、宜しくお願いします」
「畏まりました」
 そして恭しく一礼したソフィアは、シェリルに向き直って優しく微笑んだ。

「宜しくお願いします、姫様」
「あ、こ、こちらこそ宜しくお願いします!」
 そうして勢い良く頭を下げたシェリルを見て、ミレーヌとカレンは(まるで立場が逆ね)と苦笑を漏らした。一方のソフィアもシェリルの姫君らしくない態度を見て一瞬目を丸くしたが、出会った早々それを咎め立てたりはせず、無言で微笑した。

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