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第28話 トラブル勃発

 このところの特訓に次ぐ特訓で、さすがにぐったりしたシェリルが、自室の窓際で猫の姿でひなたぼっこをしていると、何だかドアの外が騒がしいと思った次の瞬間、エリーシアが突進してきた。

「エリー、どうしたの?」
「話は後! 行くわよ!」
「うきゃあぁぁっ!!」
 いきなり駆け寄ったと思ったら、問答無用でエリーシアが自分の体を抱え上げて走り出した為、シェリルはたまらず悲鳴を上げた。

「エリーシアさん、何事ですか?」
「大至急、王妃様の所に行くわ! リリスはここで待機していて!」
「は、はい!」
 慌てて尋ねたリリスにエリーシアが怒鳴り返し、足を止めずに後宮の廊下を駆け抜ける。

「エリー、一体何事?」
「ラミレス公爵が、陛下に謁見を願い出てきたのよ。シェリルの偽物を連れて」
「え?」
 忌々し気に告げられた名前に聞き覚えは無く、更に(私の偽者って、どういう事?)と益々訳が分からなくなる中、エリーシアはミレーヌの私室の一つに飛び込んだ。

「お待たせしました! シェリルを連れてきました!」
 ゼイゼイと息を乱しながら報告した彼女を見て、ミレーヌが困ったように微笑む。
「ご苦労様です、エリーシア。すぐに準備ができますか?」
「大丈夫です」
「それではシェリルはこちらに」
「……はい」
 ミレーヌが座っているソファーの傍らに落ち着いてからシェリルが見回すと、カレンを筆頭として、もう顔なじみになっている侍女達が、揃って険しい表情をしているのが目に入った。それを不思議に思っていると、ミレーヌから声をかけられる。

「エリーシアから話を聞きましたか?」
「私の偽物が現れたとか……」
「ええ。正確には『行方不明になられていた、第一王子ラウール殿下』の偽物です。先ほどの謁見室内の様子を記録した物を、こちらの壁に投影して貰うので、まずはご覧なさい。それではエリーシア、始めて下さい」
「はい、それでは皆様。こちらをご覧下さい」
 その直後にエリーシアが呪文を詠唱し、白い壁面に鮮明な画像が浮かび上がった。

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