１－１－１７ 救出戦？初戦闘は集団戦？
皆の部屋が分かり、どうしても欲しいという 物以外は今は我慢してもらい、着替えと布団だけ取ってくるようになった。
「そうだ忘れてたけどこんなのも取ってきてたんだよ」
俺はインベントリから弓一式を出して見せた。
「弓？弓道場から盗ってきてたの？」
盗るといういい方が嫌だったが、事実なので何も言えなかった。
「Ｂ組とＣ組で誰かそのうち【弓術】を獲得してほしい。和弓なんで威力も精度もあまり良くないけど、スキル補正で当てるのは出来るようになると思う。街に行ったらちゃんとした強い弓とか買えばいいから、それまでのつなぎにはなると思ってね」
「龍馬君ってホント抜け目ないのね。呆れてしまうほどだわ」
「ネ？ネ？私がいつも言うとおり兄様は凄いでしょ？誇張や嘘は言ってなかったでしょ？」
「菜奈先輩の言う事は話半分で聞いてたんですけどマジ凄いです！何でそこまで先手を読んでるのか不思議です」
「買い被りだよ、実際なんて事はない。たまたまオーク襲撃前に女神様から情報を得られたし、時間の余裕もあったから23時間かけていろいろ考えての行動なんだ。急にオークの集団に襲われてたなら何もできずに死んでたと思うよ」
「それでも凄いと思います。私じゃいくら時間があっても何も考え付きません」
「まぁ、褒めてもらえて悪い気はしないからいいけどね。それと全員に最低でも【亜空間倉庫】Lv1を獲得してもらいたい。自分の荷物は自分で持っててほしい。レベルによって量と重量制限が増えるので自分の持ち物によってレベルを上げないといけない。荷物はたくさん持てた方が良いけど余計な物は処分して、出来るなら自分や仲間を守れるようなスキルを取った方が良いと思う。共有品はレベルの高い俺が保管するので自分の装備と私物程度が入ればいいからね」
「解ったわ。後、何かあるかな？覚えた方が良いとかチーム全体で考えて、有ると良いのとかないかな？」
「そうだね、探索魔法を持ってるのが俺だけってのもあれなので、Ｂ・Ｃ組のうち誰か一人は獲得してほしいかな。Ａチームは俺と行動するから必要ないけど、留守番中に敵の行動を把握できないのはまずいと思う。俺も遠出が出来なくなってしまうしね」
「探索魔法って３種類あったよね？龍馬君のはどのタイプを取ってるの？」
「俺の獲得スキルの事は悪いけど今は誰にも教える気はない。佐竹が生きてるし、必ず殺し合いになるはずだから俺の情報は今は基本出さない。正直に言えば本当は皆を放っておいて俺だけもっとレベル上げをしたいところなんだけどね。裸族さんたちを放っておくのも可哀想だし、服と布団を優先しようと思う」
「まだ私たちの事は信用しきれてないって事ね。実質2・3時間しか過ごしてないのだから仕方ないか」
「うーん、どうだろうね。井口さんの事があったから俺の方からは裏切らないと決めたけど、裏切られる覚悟はしているからね。菜奈以外で本気で信じるかどうかは凄い時間かかると思う」
「嬉しいです兄様！私の事は信じてくれるのですね！」
「お前の口の堅さは、物心ついた時から知ってるしな。俺を裏切る事が無いのも分かってるからな」
「でも以前にも増して兄様が捻くれてしまったのはちょっと残念に思います。佐竹も憎いですが井口さんも私は嫌いです。絶対許しません」
「最終的に井口さんはああなったけど、最初はひょっとしたら俺の為もあったのかとも考えられるんだよな。甘いかもだけど全否定はしたくないな」
「龍馬君どういう事？」
「ある時、急に佐竹と付き合いだしたのが不自然でね。俺に暴力を振るわない代わりに付き合えとか言われた可能性もあるんじゃないかって思うんだけどどうかな？」
「それだと井口さんが龍馬君の事を好きだったって事が前提になるけどどうなの？」
「どうだろうね？可能性は無くないと思うけど。もしそうなら最悪な選択だよね。佐竹だけが良い思いをして俺も井口さんも救われない最悪の選択だね。菜奈ならまずしない選択だよね？」
「はい、兄様の為とか言いよってきても兄様がそれを知ったら間違いなく兄様に私が嫌われてしまいます。そんなアホの子は兄様は好きじゃないですからね。断固拒否して虎視眈々と反撃を考えるような娘が兄様の好みです」
「流石菜奈は俺の事解ってるね。理由はどうあれ他の男に自分から股を開いた時点で興味が失せるね。レイプされたとかそういうのだったら仕方ないけど。自分から体を差し出した女を好きにはなれない」
「龍馬君はもし井口さんが生き残ってて、龍馬君の事が好きで、龍馬君の為にと脅されて佐竹と関係を持ってたとしても井口さんの事は見捨てるの？」
「そうだね、今更迷惑だね。井口さんの昼休み時間の評判は高等部では全校的に知れてるだろうから女子にも評判悪いと思うよ。多分俺の虐めより有名じゃないかな？３年生なんか俺の事知らないと思うけど男子は彼女の事知ってるんじゃないか。悪いけどこのメンバーの中にそんな娘を受け入れる気はないね」
俺の意見に井口さんに同情する者、仕方ないという者、俺が冷たいという者、いろんな意見が聞かれた。
「言っておくけど、井口さんの事はあくまで可能性の話だからな。単に佐竹に本当に惚れてるのかもしれないしね。あれだけ俺の目の前で感じまくってたんだからむしろそっちの方が可能性高いぞ」
皆それもそうかと思い思いの意見を話し合っている。
「彼女の事は俺的にはもうどうでもいいんだよ、それより目の前の問題だ。食糧事情が何とかなりそうなので、まだ息のある者を助けた場合に他のパーティーが受け入れてくれるか聞いてほしい。中庭に10人、食堂に20人程まだ生存者がいる。全員女の子だと思う。助けた場合どこか受け入れるグループがあるか聞いてみてくれないか？」
少し問い合わせを待っている間に、中庭と食堂の反応が１つ消えた。
「教員棟と体育館が受け入れOKだって！」
「そうか！よし全員助けるぞ！ＡチームにPTを飛ばすから受けてくれ。PTは7人まで組めるるから今回は美弥ちゃん先生と綾ちゃんも連れて行く。皆一切戦闘はしなくていいから。離れたところで見てると良い。とりあえず安全圏内まで強制レベ上げする」
1Fに降りた時点でこっそり無詠唱で皆に【マジックシールド】を掛けておく。
自分にはさらに【プロテス】【シェル】【ヘイスト】を発動する。
中庭は酷い惨状だった。
男子生徒の死体の山が出来ていた……日が暮れて持ち帰れない分を山積みにしているのだろう。
その横で女子生徒を犯して楽しんでいるのは、見張りに残されたオークなのかもしれない。
食事中の奴もいる……正直血の匂いと生で人間を食ってるのを見た時は吐きそうだった。
美弥ちゃん先生は我慢できずに吐いていたようだが他の子たちは耐えていた。
全裸で息絶えている女子生徒も大勢いる。
首が無かったり撲殺されたような人は病気を持ってたのか、選定に漏れて遊んだあと殺されてしまったのだろう。ショック死や出血死っぽい子も大勢いるみたいだ。
俺のクラスメイトだった女子も見かけたが、すでに息絶えていた。
オークを3体殺した時点で一度レベルが上がった。
俺も含めた全員がレベルアップだ。
【殺害強奪】と【経験値増量】が威力を発揮しているようだ。
通常時の5倍程入った計算になる。皆は気付いてない様なので黙っておこう。何体倒せばレベルが上がるか俺と違って詳しく知らないのだから都合がいい。
俺は種族レベルが10になった事でジョブを選べるようになった。
ファーストジョブは勿論魔法剣士を選択した。
魔法の威力は上がるが純然な魔法使いには劣る。
剣士としての技量は上がるが純然な戦士や騎士には敵わない。
正直中途半端な職業なのだが、俺にはチートがあるのでこのぐらいで丁度いいのだ。
中庭にいたオーク27体ゴブリン11体を倒し、9人の女の子を助けた。
毛布を一枚ずつ渡してあげ、体育館までオークを殺しながら女の子を連れて行ってあげた。
教員棟の方が近かったのだが、助けた女の子たちが体育館の方を希望したからだ。教員人気無しだな。
俺たちは地下には行かず教師たちに会う前に別れた。
根掘り葉掘り聞かれたり、一緒に居るよう強制的に命令されるのを避けるためだ。
次は食堂に居る者の救出だ。
『……マスターお気を付け下さい。中にジェネラルが居ます。マスターがジェネラルを相手して、雑魚は他のメンバーに狩らせてはどうでしょうか？過保護すぎるのもこの先ダメだと思います。もうオーク程度の相手は勝てるレベルまで彼女たちも上がっています』
『それもそうだな。最弱のオークでいつまでもビビってられたら。平原にはいつまで経っても行けないからな。俺も最初はガクブルだったけど今は平気になったし、やらせてみるか』
「皆聞いてほしい。食堂の中には女生徒が20人程捕まってておもちゃにされている。中庭で見ただろうから何をされてるのかは分かってるね？で、食堂の中には60体程のオークとゴブリンが居るんだけど、どうも上位種が数体混じってるみたいなんだ。その中でも一番危険なオークジェネラルは俺が相手するから、他の雑魚は君たちで倒してほしい。皆MMO経験者だからわかってると思うが倒す優先順位はヒーラー＞魔法使い＞弓使い＞盾職＞近接職の順だからね。とりあえず杖持ったオークは最優先で攻撃してね。盾持ちが硬いようなら、先に近接を倒す事。フレンドリーファイアが無いように魔法は注意して行う事。無理な人はいるかな？」
「正直怖いです！もっと少数の時に練習させてくださいよ！」
「いきなり集団戦とか、ちょっと龍馬君酷くない？」
美弥ちゃん先生と桜が涙目で抗議してきた。
「俺もそのつもりだったんだけど、ジェネラルが中にいるからね。俺1人で60近い数は倒せない事も無いけどちょっときついかな。あちゃー、こういう話してる間にも1人女の子が亡くなってるし……。時間が余りないんだよね」
「兄様、誰か死んじゃったんですか？私たちが話してる間に？」
「ああ、そうだ。沙織ちゃんもそうだったけど、オークは残虐で悲鳴を聞くのが好きなようで、態と痛くしたり、殴ったりして泣き叫ぶのが見たいんだよ。聞こえるだろ？ああやって叫ばせてそれを聞いてブヒブヒ笑ってるのがオークの性なんだろう。助けるなら早く助けてあげた方が良い」
「解ったわ！怖いけど頑張る！」
「良く言った桜！他の者はどうする？桜だけだと危険だからあきらめるけど」
俺の諦める発言で皆奮い立ったようだ。目の前で悲鳴を上げてる人をそう簡単に見捨てられないのだろう。
助けられる力が備わったのだから当然だな。
「そう心配しなくていい。シールドと各種バフを掛けてやるから多分楽に倒せるはずだ」
「具体的にどんなバフなのかな？」
「物理防御と魔法防御と攻撃速度上昇だ」
「【プロテス】【シェル】【ヘイスト】【マジックシールド】であっている？」
「桜正解だ。無理っぽかったら速攻で逃げればいいからな。あいつら超足遅いから今のみんなのレベルなら楽勝で逃げられるはずだ。いいね？無理はしなくていいから命を優先させる事。途中でレベルが上がるだろうから、またその時は30分だけだけど作戦会議をしよう」
「それもそうね。とりあえずレベルアップまで頑張りましょう」
「じゃーバフしたから行くね。カウント０で突入するから魔法使い優先でシールドを張られる前に倒してね。５・４・３・２・１・０GO！」
戦闘開始とともに食堂に菜奈の魔法が炸裂し轟音が鳴り響いた。
