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第五話

――所戻る


 圧倒的勝利を飾ったアレク達は、国中の者に祝福され、祝勝会が催された。アレクはまた俺の言うことには従わなくなったが、まだこの世界にいる。気分次第で自分の世界に戻ったりこっちに留まったりするようだ。

 兵士は夜襲に備えて酒を飲まない。俺は酒は苦手ではないが味が好きではないので普段から全く飲まない。敵の本隊がいつ襲撃してくるか分からないので、こっちに泊まってほしいと爺さんに頼まれ、部屋に案内された。30畳ほどもある部屋というよりは広間のような部屋だ。

 部屋の真ん中にはこれまたどでかいベッドがあり、他の家具も豪華なものばかりだった。科学が進んだ今の日本でも、部屋の広さや家具なんかは一般人じゃ貧相なもんだから、この待遇は素直にうれしい。ホテルだったら、間違いなくスイートルームだろう。多少、不安はあるもののとりあえず一泊することにした。

 次の朝、太陽の光で目覚めて窓を開け外を眺めていると、ドアをノックする音がしたので返事をすると、かわいらしいメイド服の女性が入ってきた。彼女は俺の世話係らしく、朝の身支度を手伝ってくれて朝食を持ってきてくれた。一人では味気ないから、彼女と一緒に豪華なテーブルで朝食をとっていると、爺さんが慌ててやってきた。

 なんでも、鷹使役魔法を使う監視役が敵の本隊の進軍を見つけたらしい。わざわざ明るくなってからじゃなくて、夜に襲撃すれば有利になるのにと思ったが、こちらに不利なことはないので、それ以上は考えないことにした。

 おそらく、30分ほどでこちらにくるだろうとのことなので、脳内会話でアレクに相談することにした。

「と、いうわけなんだけどどうしようか」
「ふむ。防戦では状況は変わらないままだろう。ここは思い切って野戦で迎え撃とう」
「といっても、相手はこの国の兵士の倍くらいいるらしいし、きつくないかな」
「まあ、私の力があれば大丈夫だろう。だが、君が心配なのであれば、君の力で仲間を増やしたらどうだい?」

 うーん、ガチャは金がかかるからなぁ。……でも、今までの人生でこんなにも人に必要とされて、喜んでもらったことはないからなあ。人に喜ばれる幸せを知った俺は、こんな金の使い方も悪くはないと思った。うん、金ってのは人を幸せにするために使わないとな。俺はガチャを引く決心をした。この状況だし、引くのは当然猛将ガチャだ。

 1万円使い22連ガチャ。N19枚、HN3枚。早くも心が折れそうになる。もう一度22連ガチャ。N17枚HN4枚R1枚。……えげつねえな。気を取り直して11連ガチャ。

 アレクの時と同じ演出きたーっ。興奮した俺の前に現れたのは、見た目は日本人に近い、140センチ位の美少女だった。

「天下無敵、超絶美少女リョフちゃん登場☆」

……なんか面倒くさそうな子だなと思った。 俺の今までの経験上、一人称が自分の名前の女の子って性格がいろいろとアレなんだよな。それはおいといて、こんな子が強いのだろうか? 俺はリョフのステータスを確認した。

 ★★★★★UR、個人戦闘能力がやたら高くて、スキルは見事に攻撃と自身強化・自身回復のみ。仲間を助けるスキルは一つもない。アレクが万能型とするなら、リョフは完全に火力型だ。まあ、指揮能力はアレクよりは低いが見た目ほど低くはない。さらに、アビリティ・人中にリョフあり によって自身の近くのSR以下のユニットを大幅に強化することができるので非常に突破力がありそうだ。アレクのアビは大勢に少UP、リョフは小数人に大UPという違いがある。安定感はなさそうだが、上手く使えば爆発力はアレク以上だろう。なかなか頼もしい子だ。

 ただ、コストがアレク以上に高く120もある。とんだ金食い虫だ。

 案の定、リョフも俺の言うことは聞いてくれずにすぐに自分の世界に戻っていった。とりあえず、脳内会話で3人で作戦会議をした結果、大まかな作戦は決まった。

 まず、リョフとアレクが広範囲スキルをぶっ放して敵4000ほどを2000近くまで減らし、2000対2000と、数の上で互角にして、その後はガチンコ勝負。二人の指揮があれば楽勝……というざっくりすぎる作戦。作戦という言葉を使ってもいいものかと思うほどだ。まあ、昨日のアレクの化け物みたいな強さを見ているから俺もこれで問題ないとは思う。アレク以上の戦闘能力を持つリョフも加わったことだし。

 作戦を爺さんや兵士に伝え、俺たちは城門の前で用意をした。

「城壁の塔から目視できる位置まで敵部隊がやってきました」

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