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 それ以外の窓に、やはり人がいる様子はない。

 建物の大きさの割に居住者が少なすぎるのは寂れた印象を強めるが、今の十三番にとっては都合がよかった。

 馬の死体を避けて歩き、中庭と廊下を隔てる低い壁に寄りかかるように腰を下ろす。

 背負った鎌と石壁がぶつかり合って硬い音をたてた。

 死を司る象徴ならば、すでに十三番の元に揃っている。ニコラの言った通り、【死神】さえ扱えるようになれば、カルムは蘇生できるだろう。

 だが、魔術は象徴だけでは発動しない。

 むしろ、肝要なのは意思の方だ。なにかを思い願う力が弱ければ、象徴が揃っていてもなにも起こらない。アルカナが「意思を持つ象徴」であっても単体で異常現象を発生させないのは、その意思が薄弱だからだ。

 現状、十三番の意思は薄弱であると言うほかない。思考の中に自ら不可侵領域を作り、名前も知らない何者かの記憶を避け続けているのだから。

 いずれは忘れる記憶だと、理解はしていても感情は伴わない。

 復讐の決意は簡単に決められるというのに。そう考えると、妙なところに人間らしさが残されているように思える。

 人から魔術への──【死神】への変容の狭間。

 人間性と死神らしさ、どちらも中途半端に有した結果が、この体たらくか。

 十三番の口の端から、乾いた笑みがこぼれる。

 もう一度亡骸へ視線を向けると、薬草の詰め込まれた眼窩がやけに目についた。

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