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最強の男

俺は、この世界で誰よりも強くありたい。
誰にも負ける訳にはいかない。

自らの強さを証明する為だけに生きている。
そう言っても、過言ではない。

向かい風の中にこそ、自分の居場所を感じた。

だから父も斬った。
兄達も斬った。
そして立ち向かって来る者、気に入らない者、全て斬った。
裏切り者も斬った。
当然に敵も斬った。

これからも敵は斬り続ける。
また今後は仲間であった者も斬る事になるであろう。

少しでも、歯応えがありそうな奴は、片っ端から斬らなければ気が済まない。

これまでは、俺に傷を負わせる事が出来た奴すらいない。

俺の身体に刻まれた傷は全て、自ら付けたものである。
幼少の頃、父親に付けられた顔の傷以外は。

そして今、俺が身を置いている組織には、楽しみな奴が何人かいる。

そいつらは俺にとって、最後に食べる大好物の様なもの。
俺は一番好きなものを最後に食べなければ気が済まない。

しかし、そのお楽しみは、もう少し待たなければならないだろう。
その前にも、幾らか楽しみな奴もいるし、先ずは、そちらを片付けなければならない。

順序を間違えると、面倒な事になるからだ。
今は、この立場を利用して、少しでも、気になる奴等を斬りまくる。 

そして、いずれ、俺がいる、この組織も用済みになる時が来るであろう。
その時こそ、お楽しみを堪能する時である。

今から、その時の訪れが楽しみでならない。

それにしても、もう少し歯応えのある奴はいないものか。
ちっとも面白くない。

俺は、この世界で誰よりも強くありたい。
しかし、それは同時に、自分よりも強き者と出会ってみたいという事でもある。

自分自身の強さに満足する時がくるのか。
それとも、より強き者との出会いが待ち構えているのか。

俺は何の為に、この世に生を受けたのか。
これまで、その甲斐を感じた事は無い。

自分よりも強き者と出会い、それを乗り越える事が、より強さを得る事であり、そこに自分の価値がある様に思う。

だから、俺は、この世界で誰よりも強くありたい。

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