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借り物

夜も更けて、静かになって、世界が雨音に支配される時、辺りは優しさに包まれる。

俺はその優しさを少しだけ借りて、彼女に優しくキスをする。
彼女は俺を求めてくる。
俺は彼女に応える。

彼女は珍しく照れていた。
俺がいつもとは違って、優しかったからだろう。
俺はそれがとても可笑しかった。
だって彼女は知らなかった。

俺が雨音の優しさを借りていたなんて事。

五月雨の降る夜、俺と彼女は天国へと行った。
偽りの天国だったんだけどね。

朝になって、日が射してきて、世界が夜明けを喜ぶ時、優しさが俺の中に入り込む。

俺はその優しさを少しだけ借りて、彼女に優しく語りかける。
彼女は俺を求めてくる。
俺は彼女に応える。

彼女はいつもより烈しかった。
俺がいつもとは違って、優しかったからだろう。
俺はそれがとても愛しかった。
だって彼女は知らなかった。

俺が朝日の優しさを借りていたなんて事。

五月雨が止んだ朝、俺と彼女は天国へと行った。
偽りの天国だったんだけどね。

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