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異形との対面

「おや、気がつかれたようですな」

 界人は野太い声がした方向へ振り返った。
 そこには、身の丈2メートルはあろうかという、大男が立っていた。
 いや、はたして大「男」で合っているのだろうか。
 薄暗いせいではっきりとは見えないが、巨大なそれは、人型をしてはいるものの、その強靭な腕やずっしりした足、その他全身が黒みがかった緑色をしている。
 一見すると人というより鬼に近いと界人は思った。
 
得体のしれないものを目の当たりにして怯える界人を気遣ってか、先ほどよりも幾ばくかやさしく語りかけるように、緑のそれは話しかけた。

「これは失礼。驚かせてしまいましたな。儂はノーテ。グランドワーフ族のものです」
「グ、グラン……ドワー……フ?」
「左様。まあ貴殿方人間が付けた呼称ですがの。まあ、図体のでかい種族、程度に思ってくれておいたらよい」
「は、はあ……」
「おっと、儂のことはあとで良い。まずは閣下にご報告せねば、な」

ついてまいられよ、といわれるがままに、界人は状況がまるで理解できないまま、緑の巨躯の後をついていく。
通路も先ほどと変わらず薄暗く、時折まるで悲鳴のような、動物の鳴き声か何かが聞こえてくるのがより一層不気味に思えた。
3分ほど歩くと、ひと際広く、やけに明るい部屋へと到着した。
緑の巨漢、ノーテが一歩前に出て、頭と垂れる。

「閣下、例の指揮官殿をお連れしましたぞ。いずこにおられるや」

ノーテが、足もとに広がる赤いカーペットのような敷物の先にある、竜の頭をかたどったような、大きく仰々しい椅子に向かって叫ぶ。直感だが、ああいうのを「玉座」と呼ぶのだろう。ということは、ここは怪物たちの根城なのだろうか。
界人はあまりに非現実的な状況に失神しそうになりながらも、少しでも落ち着こうと状況の分析に努めた。

すると、その「玉座」に突如、紫の光を放つ円形のものが現れ、中からヌっと一人の少女が飛び出してきた。

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