第十一話『煽り界ヘビー級チャンピオン鏡望代』4/6
千尋「あ、あ……」
望代「家に泥棒が入りました!」
突如差し込まれた、語り口調。
――煽り界ヘビー級チャンピオンは手を緩めない。
望代「旦那の金が盗まれました!」
望代「ムカついたブスな女は怒って離婚すると叫びました!」
望代「くふふ。意味わかんないし」
千尋「は……はあ!? な、意味わかんないのはお前……」
望代「それがどんなに大事な物でも、普通は好きな人と頑張る"です"」
望代「だってそう"です"。悪いのは泥棒"です"。離婚なんて意味わかんない"です"」
不覚にも、周囲で見守っていた一般生徒もそのモチの主張に頷いていた。
望代「それがわかんないのは――金目当てな性格ブスだけです!!!」
望代「ブスはブサイクだから虐げられて捻くれて性格もブスになるブスです」
望代「ですですですですでーーーーす!」
望代「ぶすぶすぶすぶすぶーーーーす!」
千尋「ぐぐ……ッ!」
千尋(――勝てない)
遺伝子レベルで鏡望代を相手にできないと判断すると、残る相手は――!
千尋「こ、こいつが! その泥棒の犯人です!」
斬「……ッ!」
望代「じゃあ被害届出せば?」
千尋「え……」
望代「……!」
その一瞬の隙。
刹那の反応で見せた弱みを――この悪魔は絶対に逃さない。
望代「ブス子ちゃん? ブスです子ちゃん? もしかして人に言えないバイトしてるのぉ?」
千尋「してないです! 真っ当なバイトしてるです! そもそもブス子って……」
望代「へー! 真っ当なバイトしてるんだね! 聞いたねみんな! へー。ブス子ちゃん真っ当なバイトしててお金泥棒されたんだあ! へー!」
望代「じゃあそこの中年ハゲ(教師)に今、目の前で言ってみろよ。警察に被害届け出すといいよ!」
望代「ブスな女の子はどんなアルバイトしているんです? 真っ当なアルバイトなら言えるですよね?」
望代「四光院さんがハンバーガー屋さんから窃盗したなら被害届出せますよね? コンビニ屋さんから万引したなら被害届出せますよね?」
千尋「……ッ!」
望代「えー? マジー? 言えないのぉ~? やーん」
望代「やらしかぁ~。スケベぇ~」
千尋「だ、誰が……ッ!」
望代「おおおおおお! お前それパパ活バッグだろ!」
望代「あ、よく見たらドンキの安物ブスバックだったし」
望代「勘違いしたし。謝れよブス」
千尋「ぐ、う、ぐうぅ……!」
あまりに悔しさに、意図せず流れた涙。
千尋「う、ぐぅ、う……」
千尋「うううう、ぐ、うぅ、ぐ……」
斬「も、モチ。そろそろ行こうか……!」
望まぬ形ではあったが、雌雄は決した。(雌VS雌)
傍観者もどんどんと増えてきて、斬も流石にこれ以上は気まずいが……。
望代「くふふふふ! 泣き顔ブッサ!」
望代「あ、違うし。泣き顔もブサイクだし! ブサイク! ブス!」
人を呪い殺す黒魔術師には気まずいという感性を持ち合わせていない。
望代「バスを英語表記で書く時のスペル」
望代「ビー、ユー、エス」
望代「ブス!」
望代「バス!」
千尋「バスじゃないじぇすぅ!」
斬「……」
鏡望代の強さは序盤・中盤・終盤。そして試合終了後の死体蹴りまでもその呪いは解かれない。
斬「モチ。頼むからなその、これ以上は可哀相……」
望代「あ、床汚すなよ汚ねえ。ブスの鼻水踏んで誰かが転んだら可哀相だし」
望代「って一番可哀相なのはお前のその顔!!! ブーッッス!!!」
望代「イェーイ! ブスイェーイ!」
ハイタッチを求めに行くが、睨みながら、過呼吸を繰り返して、それでも頑張って睨む。
千尋「わ、私は、ばだちは……ッ! ゴフッ、オホッ、ゴホッ!」
斬「……」
煽り界世界ヘビー級チャンピオン。三階級制覇だったね。
ボクはまだ、鏡望代の恐ろしさを何も知らなかったのかもしれない。


