第十話『あの人』3/3
新人教師「おい竹原! 今日と言う今日は許さんぞ!」
正明「ッ!?」
オレは――ッ!
この時ばかりは、意識を覚醒する有り難い説教だった。
新人教師「お前もだこの問題児!」
木葉「ふぇ?」
新人教師「小学生みたいな身なりで我儘ばっかり言いやがって! 葉山先生がPTSDになったんだぞ!」
木葉「は……誰よそいつ」
新人教師「なんだ教師に向かってその物言い!!! お前日本人のくせに敬語も使えないのか!!!!」
木葉「はあ……?」
木葉「おい。今あんた誰に向かってなんて言った?」
新人教師「お前に向かって言ったんだよ問題児が偉そうに! 大体なんだこの変な帽子。制服すらまともに着けらr……」
木葉「……」
新人教師「……」
新人教師「……………………」
木葉「なによ。この風雪木葉に文句があるんでしょ。続けなさないよ」
新人教師「……………………」
木葉「いいわよ。影でコソコソしているなら踏み潰すけど――」
木葉「この風雪木葉に真っ向から喧嘩を売る度胸。買うわ」
新人教師「……」
おくちをパクパク。おくびをフルフル。
――天を仰いだ。
その先は澄み渡る青空なんて広がらず閉鎖的な天井。学園の廊下なのだから当たり前だ。
新人教師「――つぇ!」
新人教師「とぇ、とんだ! とんだ間違いでして、その!」
新人教師(終わってない! 終わってないかもしれない! 今日は珍しく機嫌が良いかもしれないし、なんとかなるかもしれない……!)
その都合の良い妄想は偶然にも現実。
彼女は新しい帽子を手に入れてこの日は珍しく機嫌が良かった。
地雷ワードさえ踏まなければ、お咎めないという一年に一度あるかないかぐらいの幸運。
新人教師「その、鏡と間違えて……その、つぁい。はい。あの、えー……」
木葉「鏡?」
新人教師「はい! 鏡望代という問題児がおりまして……」
木葉「はあああああああああああああ!!!!!?????」
地雷発動。禁止ワード鏡望代。
新人教師「ああああああ、いえ、いえ!」
木葉「あんた今……はああああああああああ!!!!????」
新人教師「あああああああ! 考えろ! 考えろ! 俺! 考えろ!」
木葉「このあたしを!? あんなチビ女と間違えたですって!!???」
木葉「あんた目玉ついてる意味ないわよね!」
木葉「ないわね!」
木葉「ないわ!」
木葉「ない!」
木葉「な!」
新人教師「ちょ、うn、gkあい。ごKaい。後回、誤解です! しょ、そん、SおnんnゃこTぉなッ、誤解! 誤解!」
木葉「殺せ!!!」
掛け声と共に空き教室から黒服がわらわらと溢れてきた。
新人教師「ちょ、ろ! お! ま、て。まって、まっ……うああああああじゃ、待って、まッ……」
木葉「ふん。誰よあいつ」
木葉「……」
木葉「あれ、正明……?」


