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第八話『竹原正明ってなんだ?』3/3

今の自分はどうだ?

マンションの三階から飛ぼうとしている。
失敗したら最悪のケースで死ぬ。

それが怖くないのに、怖い?
なんだ? これ? あ? 意味わかんねえ。なんだよこれ。

自分が、壊レてイルのガわカる――

坂口「……正明」
正明「チッ……うっぜえ」
正明「うぜえうぜえうぜえ!!! 入ってくんなよオレに!!! 邪魔なんだよ!!!」

それ以上の言葉が聞きたくなく、重力を失い落下する――

坂口「バッ……馬鹿野郎!」
三階と二階の間のくぼみに捕まり、そして二階のベランダにつかまる。
その手順はもう一度繰り返せば、理論上腕が踏ん張れるうちはどれぐらいの高さであっても問題ない。
正明「――うおぉ!?」
最後の工程で、くぼみに指が入らず――
正明「ぐへえ!」
足から背中へと派手に打ち付けた。
坂口「正明!!!」
正明「ぐ……カスが……」
ポケットにある財布を確認する。携帯もある。割れてない……といいな。タバコは……タバコもある。よし、完璧。
オタオタしててあの反社会と鬼ごっこなんてイヤだからな。
そそくさと近くの路地に体を潜ませ、ゆっくりと裏道を進む。
坂口「あいつ……」
店長「余計なお節介だったかい?」
坂口「……」



正明「……ッ」
背中が痛い……あと足を少し軽くひねったかもしれない。

ぐぐぐ……クソが。
それでも頭を過ぎるのはグッチー先輩への愚痴でもなく、さっきの言葉。

『今ギャンブル負けてイラついてんだよ』

そう。それは竹原正明としての正しい回答。
だけどそれは、オレの心境と乖離した言葉。

「あのゴミ、オレの渋沢の慈悲を無下にしやがって……」
「過保護面してんじゃねーよ反社が」
「誰だよベランダに植物とか置いたアホ」
「腰痛え死ね!」

竹原正明"らしい言葉"がどんどん浮かんでくるが、どれも吐けない。

いや、吐く事はできるだろう。
それをするとさっきと同じでぐるぐると出口のない思考の渦に囚われる。

オレが、壊れる。
正明「……」
負の思考がぐるぐると回る中、偶然か、必然か辿り着いたのはこの廃ビル。
『本番有り』とわけわからないテカテカした看板が照らされる
その場所の地下三階。

『リレイズ北村』

入り口には踏みつけられたタバコの吸い殻。オレのラッキーストライク。
正明「……」
吸い殻を拾うと、この場所を後にした。

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