第八話『竹原正明ってなんだ?』1/3
▲【12/10】
◆【街】
目的地はなかった。
ただの時間潰しなのか、何かを待っていたのか。
しかし現実には誰とも会わず、面白おかしいイベントなんてないまま時間だけが経過した。
どれぐらい歩いただろうか。
彷徨い疲れた後、辿りついたのがここ。
リレイズ北村へと続くビル。
正明「……」
そのまま、固まった。
まるで御札が貼られた境内を恨めしそうに眺める悪霊のように、ジッと見つめる。
正明「……」
15分ほどだろうか。
タバコを吸い終わると、力なく火種を踏みつけた。
結局、その先に向かう事はなかった。
悪霊は再び、街を彷徨う。
正明「ロン!」
僅か二時間もせず、8渋沢から9渋沢。
相手の身なりを見るに、博打してもいい金額の裁量を大きく超えた額であろう。
短時間である故にゲームの終了が逆に難しい。
それはそのはず、いつもの倍以上のレート。
失う代わりに、まだ取り返せる芽も残っている。
学生「ぐ……」
正明「ロン!」
麻雀には持ち点25,000点を2,500円と扱う"テンピン"と呼ばれるレートを基準に、その二倍である"リャンピン"。五倍の"ウーピン"(ゴジュー)などレート毎に麻雀用語としてレート名が確立されている。
しかしそれに意味を持たないのが麻雀の特徴。
赤ドラ。返し。チップ。やきとり。ウマ。ドボン……などなど。
オプションの種類が豊富でそれらの金額により極端な話点数そのものが意味を持たないケースも存在する。
それでも、
学生「立直!」
正明「こっちも立直だ!」
学生「……ッ」
"デカピン"と呼ばれる相場の10倍。25,000点=25,000円で扱うレートを打ち合わせも戦略もなしで博打として打つのは久しぶりだった。
正明「……らあッ!」
学生「チッ……テンパイ」
正明「テンパイ」
終わったのはそれから時間もかからず一時間ほど。
打ち手の一人の残金が尽きたとの事で、今日はお開きになった。
学生「……お前、名前は?」
正明「スリーセブン」
学生「ふっ……なるほど……」
正明「……」
なにがなるほどだよ、クソ雑魚が……ッ!
場に捨てられた金、渋沢11枚と千円札。
渋沢を一枚だけ置き残りをポケットに突っ込んだ。
店長「……」
正明「うるせえ。死ね」
店長「まだ何も言っていないだろうが」
説教ができない相場以上の場所代を握ると、カウンターの奥へと帰っていった。
正明「……ッ」
足りない――ッ!
博打も、金も、熱も、相手も、オレも。
なにもかもが足りない――ッ!
正明「ッハ」
ペットボトルの水を飲み干す。
酷く、喉が乾く。
潤わない。
正明「チッ……」
次のカモを待つか……。
足りない。足りない……!
なんだ――オレは、何をしているんだ……?
店長「……」


