第六話『VSノルンの妃』7/9
木葉「オールイン」
春樹「……ダウン」
二階堂春樹が違和感に気付いたのは僅か3ゲーム目。
喜怒哀楽の感情に溢れる小さな世界ランカーからブラフの臭いが感じ取れなかった。
木葉「オールイン!」
春樹「……」
名実共にCK。日本最強如きが感じ取れない上手さ。高等な技術でブラフを駆使し……。
春樹「……」
頼む、そうであってくれ――。
半分心の中で乾いた笑いを抱きながら、見つめるは木葉の表情。
『良いカードが出た。勝てる。オールイン』
そんな、短絡的な感情しか伝わってこない。
彼女の言う良いカードという判定がどこに定められているのかはわからないが、
木葉「オールイン!」
いい加減にしてくれ……!
もし、もしもだ。仮定の話しとして、もし春樹の予想が本当だとすれば――。
春樹「……」
マークドデックが使われている事はゲーム前から知っていた。
ということは、竹原正明は風雪木葉のカードを把握できていて、
正明「……チッ」
はは……マジ?
その表情が、仮定の話しが真実であると裏付ける要素にさせる。
木葉「オールイン!」
春樹「……」
正明「……」
それは、あまりにも不条理で。
運が。
偏りが、落ちない。
10ゲームを過ぎ、ようやく初めてのコールが成立して捲られるフロップカード。
3,8,K。
木葉「レイズ2,000」
場に貯まった点数、ポットは2,000点。同額のレイズはセオリーとでも言えるが、カードが見える正明には白々しさしか感じられない。
木葉のカードはKK。
現状で考えられる最強のカードである。
春樹「……」
春樹からすれば、迷う。
普通のプレイヤーとして考えれば3人とはいえこれだけオールインを連打しているのだ。
確率的に考えればどこかでブラフを使っているはず。
3,8を持っているツーペア。
確率的にブラフベッドを続ける彼女を考えれば十分に倒せるカード。
春樹「……」
嫌な予感がする。
強いから行く。勝てるはずだから勝つ。
セオリーがないのがセオリーのこのゲーム。普通の人間はまっさきに殺される。
春樹「ダウン」
結局、二階堂春樹はカードを捨てた。
正明「……」
仮に、仮にだ。
オカルトの話しとして、この少女が常人の倍以上の運を持っているとしよう。
倍以上の運、というのもあやふやな表現だが、それでも流れや偏りは必ずあるもので。
つまり勝負には転機が必ずやってくる――。
木葉「オールイン」
――転機は訪れない。


