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第五話『錬金術師の死相』5/5

終始無言を貫いていたジャンが、ついに切り出した。
斬「さっきの、なに?」
正明「ナオっち? 昔のダチ」
斬「……そう」
不満そうに牛丼をつつく。
正明「あん? 機嫌悪い日かよ」
斬「マサ。そういうのは良くない。女の人は本当に重い人もいるんだから言葉に気をつけた方が良い」
正明(こいつすぐ下ネタに繋げるよな……)


――マサは、何をしたいんだろうか。

この学園に入ってから、ほぼマサと一緒に居る。
適当な男で、それでいて几帳面で金にうるさいし面倒な男。
そういう表面上のマサはイヤという程知っているが、竹原正明を知らない。

斬「ボクはずっと居る」
正明「あん?」
斬「マサが離れろと言うまで。何があってもボクはマサの隣にいる」
正明「……どしたよ?」
斬「……別に」
正明「……」
正明「ん、あれ? 今の告白?」
斬「ちがう!」
正明「ヒヒヒ、ジャンちゃんはエッチな子なくせに純情振ってるからねー」
斬「それ以上口を開くなら――」
正明「美味しい牛丼でゲス!」
斬「……」

それは二人にとって日常のやりとり。
二人の仲は変わらない。

だけど、どこかこう。何か。ナニカに亀裂が走ったのを感じて――。

正明「ジャン」
正明「オレは止まらねえからな」
正明「相手が強くても。勝ち目がなくても」
正明「オレは、竹原正明だ」
斬「……」
死相というのを初めて視えた気がした。

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