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第五話『錬金術師の死相』2/5

そして次局。
再び山から麻雀牌をぶっこ抜く。
男「……ッ!」
ほぼほぼ条件反射でそれを捕まえるが、
トントン、と無言でテーブルに『置け』と指で叩く。
男「……」
雀卓というのは今の時代進化しており、テーブル内の電光表示にて他家(他のプレイヤー)の点数が表示されている。
その男の保持点数は9,000点であり、
正明「ん? 置けよ」
置けない。
駆け引きではなく、その男は一万点棒を持っていないため物理的に置くことができない。
男「……」
握っていた。
今度こそ、まるでこれが狙いだと言わんばかりに。
だけど一度決めたルールである万点棒を保有していない。
おもむろに正明は斬ともう一人の打ち手の表情をそれぞれ確認する。
『お前達は万点棒を置かないのか?』
仲間である斬はもちろん、もうひとりが置かないとなればこの場でイカサマは成立する。
そしてもうひとりの男性は置かないと決めつけた上での判断。
力なく、掴んでいる腕が離れた。

男「……」
結果は正明の読み通り、イカサマは堂々と受理された。

――ところが、
正明「待て」
それを静止したのは何故か正明本人。
正明「リスク取ればいいつったろ。ベッド乗せるなら別にいいぜ。見せてやるよ」
正明「小指を折る」
男「は?」
正明「この中に何もなかったら、お前の小指一本折る」
男「いや……はあ?」
正明「気持ち悪いんだよ。人をイカサマ野郎みたいに言いやがって」
正明「ゲーム一々中断されたらたまんねーわけ」
斬「……」
なんだろう。
それはいつもの正明であり、いつもの正明じゃない違和感。
正明「開けるか?」

これは結局、どういう意図だったんだろう。
結果としてこうなった以上、この二人はもうカモにはならない。
正明を警戒している以上、もう同卓はないだろう。
自分の名誉を傷つけられて憤る……そんな考えも四光院が知るマサとは遠い思考である。
少しでも殴られた相手は徹底的に追い詰める一方、自分から率先して痛めつけるのは少ない。
斬「……」
いや、そうでもないか。現にこうして嵌めて麻雀をしているのが、ある意味道理で。
でも、なんだろう。どこか正明らしくない。

男「や、そんな、別に……」
斬「……」
マサがおかしいとして、思い当たる節は――。
結局、手は開かれないまま正明の大勝利で今日は終わった。


店長「本当にお前は言うこと聞かないなあ」
正明「……」
従来の場所代に加えて、千円を乗せる。
店長「足りんわアホ」
斬「マサ。どこか食事にでも行くかい?」
正明「おう。どこ行きたい?」
斬「マサの行きたいところでいい」
初め、マサは死にたがっているのかと、自暴自棄のようにも見えた。
或いは、こんなギャンブル生活を終わりたいのかと。
でもそのどちらでもなく――なんだろう。
正明「あー……ちょっと、寄り道したいところあるんだけど、付き合ってもらっていいか?」
斬「うん」
もしかしたら、ギャンブラーとして上のレベルに上がっただけかもしれない。

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