第四話『リジェクト殺しのピーターパン』2/4
裏世界。
国から事業を委託する際の競争入札は日本のみならず他国でも幅広く採用されている。
もちろんそんな事を素直に受け入れれば利益が少なくなる。
よって生まれるのが談合。
談合イコール悪というのは一概に百パーセント間違いとは言い切れない。
プロジェクトの規模や重要性が増すにつれ、仕事が完成できませんでしたで許されないのも事実ではあり、そのため国家が見逃しやすい犯罪行為の一つである。
もっと言えばどうせ一社が独占して行うのではなく、仲間内に部分委託を行うのだ。
ある時から特定の業者内でぐるぐると回していく構図から異なり、平等にチャンスを与えるものへと変化した。
歴史の始まりは接待だった。
競争入札はいつの間にかゲームでの決着となり、それに用いられたゲームがたまたまテキサス・ホールデムだったという話しだ。
各種業者のオーナー同士で戦い、勝者が受注する。
そう言った表向きの機会の平等の果ては結局は接待。
勝利した会社は同じテーブルで向き合った仲間を讃え仕事の一部を譲渡する。
テーブルを囲っているお仲間の談合に過ぎないのだが、余所者もその場所に積極的に誘えばお仲間となり、最終的にははぐらかせるという寸法。
一言で表せば茶番だ。
『もし余所者が勝利した場合はどうなるのか?』
そのリスクを真剣に考える者は誰一人いなかった。
理由として、同時期に代打ちとしてプロポーカープレイヤーを活用するのが流行ったのが要因だ。
加えて圧倒的な資金差で万に一つも起こり得ないゲームは名実共に接待の名を定着させる。
弱小企業も輪に加えるという大義名分。
中身を知れば利権や癒着と揶揄する人もいるだろうが、それを封殺するためのカモフラージュであり、機会の平等は少なくとも真実となった。
事件が起きたのは7年前。
フランス大手エファーシュ社が用意した当時人気・実力共に最上位に位置したポーカープレイヤー。
最上位の名を表すのは世界の頂点13名の称号を持つクラスKに該当する。
名をシルヴィ・アズナヴール。
全てを排除・排斥する"リジェクト"と呼ばれる悪魔。
その悪魔の前に座るのは見た目中学生の容姿である幼いアジア人。
資金差は80倍。
となれば勝つ気はなく、接待目的で座った幼き少年は悪魔と同席できた事が記念になるだろう。
――そのはず、だった。
圧倒的な力を持つリジェクトは接待であろうがいつも通りチップをちゃっちゃと回収に励むが――その日、その少年の様なアジア人はあろうことか噛み付いてきた。
圧倒的な実力差。資金差。
一瞬で決すると思った勝負はあろうことか長期化した。
まさかまさかの大逆転かと多くのギャラリーを集めたのが仇となり、後に歴史の闇に葬り去る事が出来なくなった。
飲まず食わずで42時間後、ついに決着。
シルヴィ・アズナヴールは敗れた。
その翌日、シルヴィ・アズナヴールは謎の失踪と言う名の粛清。
勝利を収めた名もない少年はその後闇に消え、頭角を表せたのはそれから3年後。
相手の意図を見抜き、高い技術を持つその少年は今や30を超える年齢に達しても見た目は老いず当時の少年のまま。
日本で実力者のプロと持て囃される男は裏の世界でこう呼ばれている。
――リジェクト殺しのピーターパン


