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第四話『リジェクト殺しのピーターパン』1/4

▲【12/08】
★【002.歴史を創った少年の今】
◆【WENS CASINO】
男性「助けて、助けてくれよ……反省している……もう、二度とやらない……」
カジノエリア閉店後。
一人の男が泣きながら懇願していた。
それを楽しむように囲みながら酒が交わされる。

高木「持ち逃げなんて舐めすぎ~」
全裸で土下座する男に対し、従業員は火の点いたタバコをゆっくりと首元に持っていくと面白いほど嫌がる。
男性「ひ、ひぃ……や、やめ、やめて……!」
高木「ははは、泣いてるよこのおっさん。ラシェルさん。どうしますか?」
ラシェル「……」
男とも女とも判断が難しいその中性的な容姿のラシェル。
続けて怒りでも呆れでもない、読み取れない表情のまま近づいてくる。

そしてそこにあったからと言わんばかりに手元にあったワイン瓶を無表情で持ち上げた。
男性「え……」
高木「いや、流石にそれは……」

次の瞬間、
男の叫び声と同時に赤色が床を侵食した。

男性「ぎゃあああああああああ!!!」
高木「……ッ」
息を呑んで見つめる先、自分の行動選択を何故不思議そうに眺めるのか首を傾げるラシェル・オンドリィ。

ラシェル「……」
割れた瓶はまるで刃物のように尖り、再びそれを振り上げる。
男性「や、や、やあああああッ!」
高木「ちょ、ちょっとまってください! 流石にそれ死んじゃいますよ!」
ラシェル「……?」
ラシェルにはわからなかった。
何故痛みが嫌いなくせに泣き叫ぶのか。
何故こんなゴミが死ぬのが問題なのか。
ラシェル「問題? それ」
高木「問題って……」
男性「ご、ごめんな、ごめんなさい! ごめんなさい!」
ラシェル「ねえ。そのためじゃないの? なんのために反社がいるの?」
高木「そ、そんな……」
男性「……」
男性「ひ、ひぃ……ひ、ヒッ……」
一呼吸遅れて泣き始めた。
助けるつもりがない。それを遅まきながら理解してただただ許しを乞う涙を流す。
ラシェル「……」
手から滑り落ちたワイン瓶は床に吸い込まれて四散した。
どこまでがワインか、どこまでか血なのか誰にもわからない。

男性「ひ、ひいいいいいいいい……!」
許しを乞うてもそれを聞き入れたとは思えない。もちろん、仲間の静止もこの男の耳には届かない。

ラシェル「……」
突如、思い出したかのように椅子を蹴り飛ばした。
男性「ごめ、ごめんなさい、ごめんなさいぃ……」
高木「……」
ラシェル「ああ。わかった。そういう事か」

なるほどね。
やっぱりボク、苛ついているんだ。
それはそう。
薩摩真司本人であれば、それでもあってはならないがまだ納得はできた。
ところが因縁の相手ではなく、あまつさえ本人でなくその横にいる金魚の糞に……!
あんなゴミに……
あんな、ゴミに……!

高木「ラシェルさん、血が……」
ガラスで切ったのだろうか。
言われてみると掌が血だらけだった。
ラシェル「……はあ」
ゆっくりと、赤く染まって手で二本目のワイン瓶を掴んだ。
ラシェル「ダッサ」
八つ当たりだね、これ。
男性「や、やめ、やめて……」
男性「わあああああああああああああ!!!」

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