第二話・ノアの願望
あれから数日、二人の体調は段々と良くなっていった。
レイトもついに目を覚ました。
黄王奈「どう、何か覚えてる?」
レイト{幼少期}「………いえ…何も。」
「そう……。」
レイトにもノアと同じような質問をした。
しかし、彼は何も覚えていないようだった。
康平「……行き詰まったか。」
「そう、今のところは…ね。」
「……まさか、お前。」
「えぇ、そのまさか。」
「……はぁ…。」
「お前の考える事が、ときどき恐ろしく思えるよ…。」
康平はため息を吐きながら呆れるような顔でこちらを見てくる。
「あのなぁ、幾ら人手が足りないからって、こいつらを裏の人間にするのは賛同できない!」
「こいつらは俺らと違ってまだ表社会に復帰出来る可能性がある!」
「そんなガキンチョを、わざわざ欲望に塗れた汚い裏社会に引き込むなんて…。」
「幾らなんでもやりすぎじゃないか?」
「…何も、別にそんな理由で裏社会の人間にするつもりはないわ。」
彼女は一呼吸おいて話し始める。
「だったら尚更…!」
「康平、彼らが虐待もしくは、」
「それ以上の酷いことをされていたとしたら?」
「………ッ!」
彼女は真剣だった。
何かを彼らに感じ取ったのか、いつも以上に必死だった。
「それが分からない状態で表社会に復帰したら……、」
「何されるか、分かったもんじゃないわ!」
「それに……、」
「?」
「彼らの裏には、とてつもなく大きな陰謀や組織がある気がするの...。」
「………。」
「一旦は保護という形で、私達で面倒見ることにしましょう。」
「ただ、あんたがどうしても彼らを裏の人間にしたくないって言うのなら、裏の人間にするのは、"彼らが望めば”にする。」
「それなら良いかしら?」
「……ああ、分かった。」
「…… 取りあえず、依頼されてた仕事消化してくるから。」
「分かったわ。」
そういうと、康平は黄王奈に背を向けて闇夜へと踏み入れていった。
「……ふぅ。」
ドサッ
彼女は溜めていた息を吐き切ると、自分の机に座り込み、紅茶のカップを手に取る。
康平と意見が合わないことは長い付き合いの間に何度かあった。
ただ、それでも双方自分の立場を分かっている為、すぐに丸め込む事が出来た。
…ズズッ。
(そういえば、茶葉の在庫が無いんだっけ……。)
茶葉、買いに行かないとね....。
と、彼女は心の中で思った。
その時、
…!
ノア{幼少期}「………モジモジ。」
物陰からこちらを見ているノアがいた。
「ノア、どうしたの?」
黄王奈は笑顔を浮かべて、ノアの方を見る。
「……………り……たい。」
「?」
「わ、私……、」
「裏社会の…人間に……なりたい……です…!」
「………え?」
黄王奈の思考は一瞬止まってしまった。
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