闇探偵登場2
〇ジュエルライフ横浜・外観
広い駐車場に面した、外観が宮殿のような2階建ての宝石店。
〇ジュエルライフ横浜・1階フロア
店の外から響くけたたましいエンジン音。
入口自動ドアに目を向ける宝石店の男性店員。
店員「ん?」
小型トラックが自動ドアに向かって突っ込んでくる。男性店員、目を大きく見開く。
店員「――えっ‼ええっ‼」
自動ドアを大破し、小型トラックが丸ごと店内に突入する。
客「⁉」
腰が抜けてなかなか立ち上がれない男性店員と、トラックに驚愕している周りの客達。
店員「……‼」
客「何?衝突事故⁉」
客「…あぶねー‼」
運転席と、コンテナのドアが開く。そこからプロレスラーの試合用マスクをかぶり、黒いジャージ姿の2人組の強盗(A、B)がそれぞれショットガンを構えて出てくる。
店員「ごっ 強盗⁉」
強盗A、天井に向かって
銃声×1。
客「きゃあ‼」
強盗A「おらッ‼お前ら‼殺されたくなかったら言う通りにしろ‼」
強盗B「客と店員達は床にうずくまってろ‼」
強盗A、腰を抜かす男性店員に向かって、
強盗A「そこの店員は俺を警備室まで連れてけ‼」
店員「わっ わかりました‼こちらです」
強盗A「言っとくがコンテナの中にまだ仲間はいるからな 変なマネすんじゃねーぞ!」
強盗Bが監視する中、客と店員達がフロア中央で身を屈める。
男性店員の後頭部に銃口を向け、店の奥へと向かう強盗A。
強盗A「ちゃんと連れてけよ!警察が来る前に」
〇ジュエルライフ横浜・外観
大破した自動ドアから左腕が血だらけの警備員が4人、ふらふらとした足取りで出てくる。
警備員「だ……誰か……‼救急車‼」
バタッ、バタッとうつ伏せに倒れる4人の警備員。入口自動ドア前のシャッターが閉まる。
〇ジュエルライフ横浜・駐車場
駐車場の片隅に神奈川県警捜査本部のパイプテント。多くの捜査員のほか、機動隊が控えている。
駐車場の周囲には立ち入り禁止テープが貼られている。テープの前に立つ男性中継アナウンサーとテレビカメラを構えるテレビカメラマン。
中継「――事件発生から間もなく50分が経とうとします!」
中継「午後0時5分頃に負傷した警備員が解放されて以降 事件に大きな動きは見られません!」
中継「宝石強盗犯からは
〇ジュエルライフ横浜・外観
建物1階正面に向かって左側の2か所の大きな連窓がドーッンと爆炎を立てて同時に爆発する。
〇ジュエルライフ横浜・駐車場
爆発音に驚く中継アナウンサーと爆破した窓にテレビカメラを向けるテレビカメラマン。
中継「今 宝石店の1階部分の窓が幾つか爆発しました‼店内にいる客達は無事なのでしょうか⁉」
捜査本部のパイプテント内が慌ただしくなる。
刑事「おい!爆発したのはどの辺りだ⁉」
宝石店内の見取り図を広げながら、
刑事「1階のジュエリーコーナーです‼」
機動隊に指示する刑事。
刑事「強行突入だ‼急げ‼」
機動隊「はい‼」
〇横浜中央生命病院・外観(夕方)
駐車場を生垣で囲まれた8階建ての救急病院。
〇病院・外来ホール
ホールに設置された大画面のテレビに映る報道番組の女性キャスター。
キャスター「――ここで新たな速報です」
キャスター「今日「ジュエルライフ横浜」で起きた宝石強盗事件で強盗犯に銃で撃たれた宝石店店員の死亡が確認されました」
キャスター「この宝石強盗事件で強盗犯4人が爆発に巻き込まれて亡くなっています」
〇救命病棟・廊下
救急救命士の
村市「さっき病院の外でマスコミに突撃取材されてさ すぐに逃げたけどよ」
岩上「マジ?まだいんの?俺 事件のこと 思わずうっかり口に出しちまうかもな」
村市「とにかくしつけーよなー マスコミって」
救命病棟入口の自動ドアが開き、外に出る2人。
〇救命病棟・外観(夕方)
石畳を挟んで、自動ドアの向こう正面に雑木林。その枝の上にびっしりととまっているカラス。
鳴き声を上げてカラスが一斉に飛び立つ。
カラスが飛び立った直後、雑木林の木々の合間からヒョイ、と躍り出る
上から下まで黒のフード付きのウインドブレーカーを着用し、口元のマスクと足元のスニーカーも黒で統一している。
闇探偵の姿に村市と岩上、不思議そうな表情を浮かべる。
岩上「…?」
村市「誰だろ?」
自己紹介する闇探偵。
闇探偵「初めまして 俺は〝 闇探偵〟 フリーの探偵です 救急救命士の村市岳斗さんに岩上晃一さんですね?」
闇探偵に名前を呼ばれて戸惑う村市と岩上。
村市「や……闇探偵?」
岩上「なんで俺達の名前を……」
闇探偵「急にすみませんね なんせあなた方お二人を待ち伏せする場所がここしかなかったので」
村市と岩上、険しい目付きで、
村市「……待ち伏せって つけてたってことか?」
岩上「なんのために…?」
闇探偵「答え合わせするためですよ ジュエルライフ横浜で起きた宝石強盗事件の」
闇探偵「重傷の警備員が4人 搬送されてますよね?」
岩上「アンタ マスコミ関係者か?断る‼搬送した患者の状態がなんであれバカ正直に教える気はない」
村市「はっきり言ってしつこいんだよ」
闇探偵「突っぱねても俺は知ってるんですよ……」
村市と岩上をビシッと指差す闇探偵。
闇探偵「あなた方お二人が今日の宝石強盗事件に
痛いところを突かれ、顔を歪める村市と岩上。
村市(‼……なんでバレてる⁉)
岩上(いきなり現れてコイツ何者だ⁉)
闇探偵「おやぁ?早くも危機感が顔に出てますよ よほどポーカーフェイス下手なんですね?」
闇探偵「では畳みかけていきますのでじっくり聞いてください 俺が徹底的に調べた宝石強盗犯の逃亡劇について」
村市「待て!アンタの言ってることが突発的過ぎて――」
岩上「そうだ!順を追って説明してもらわないと――」
闇探偵「いいですよ だったらお望み通り順を追って」
闇探偵、推理を語り始める。
闇探偵「まずは宝石強盗犯がなぜコンテナトラックで店に突っ込んで店員を銃で
闇探偵「答えは!強盗犯の人数をごまかすためです‼」
村市「ハアッ?人数をごまかすって ついさっきニュース見たけど4人組だったんだろ?強盗犯は」
闇探偵「違います 宝石店にトラックで突っ込んだ時点ではまだ2人組でした」
闇探偵「4人組になったのは店員を銃で脅し 警備室まで案内させた後です」
岩上「えっ?食い違ってんだろ 強盗事件で運よく生き残った人質の証言と」
岩上「事件が発生した当初 2人組の強盗は自分達の仲間がまだトラックのコンテナの中にいるって……」
闇探偵「確かに だけど実際コンテナの中にいたのは仲間ではなく強盗犯の〝ダミー役〟4人です」
村市「ダミー役?ふざけてんのか?」
闇探偵「とんでもない ダミー役は最後に強盗犯のメンバー全員が爆死したと認識してもらうための〝裏方的〟立場を
岩上「さっぱりだな もっとわかりやすく話してくれよ」
闇探偵「では最初の方 トラックで店を突っ込んだ直後の部分から……」
闇探偵「トラックから降りた2人組の強盗はその後 2人の共犯者と落ち合いました」
岩上「共犯者?すでに店の中に強盗犯の仲間が
闇探偵「もちろん‼その共犯者というのは宝石店の警備員です‼」
村市「け 警備員って⁉あのなぁ……警備員なら4人とも銃で撃たれて病院に搬送されてんだぞ?」
闇探偵「もちろん 自分達で撃って負傷したんでしょうね」
村市「だったら最初にトラックで店に突っ込んだ2人組の強盗犯は⁉ソイツらも爆死する役目だけで終わったのか⁉」
闇探偵「んなわけないでしょ 最初の2人組の強盗犯の正体も警備員だったんですよ それなら納得いきますよね?」
岩上「どこが⁉
村市「くだらねぇ結論に終わってんじゃねーか‼これ以上相手にしてられるか‼行こーぜ」
独り言のように呟く闇探偵。
闇探偵「見え透いた
怒りをぶつけるように闇探偵、雑木の主幹に勢いよく右回し蹴りする。
ドンッ、という音が響き、思わず気圧される村市と岩上。
村市&岩上「――ッ⁉」
闇探偵、冷たい目つきで村市と岩上を見つめ、
闇探偵「……もっと具体的に話しますね」
弱弱しい態度になる村市と岩上。
村市「悪かった……」
岩上「続けてくれ……」
闇探偵「事件を再び最初に戻します まずトラックで突っ込んできた2人組の強盗は
闇探偵「トラックから降りた直後 2人組の強盗は分散しました」
闇探偵「片方の強盗犯は店員1人を銃で 脅し 警備室までの案内役をやらせました」
闇探偵「案内後に店員を銃で撃つと 残りの仲間の警備員2人と合流します」
闇探偵「その間 もう片方の強盗犯は客と店員を拘束して見張り役を」
闇探偵「さらに見張り役の強盗犯も加わり 4人組になった強盗犯達は宝石類を奪取し 1階のジュエリーコーナーにダミー役4人を運んで時限爆弾を仕掛けました」
闇探偵「ダミー役は闇バイトの募集で雇った
闇探偵「ジュエリーコーナーを爆破したのはダミー役の存在を消すためと宝石が紛失したのをわかりにくくするためです」
闇探偵「強盗犯は謎の爆死を
闇探偵「 強盗計画も終盤を
闇探偵、自信満々に両手を広げ、
闇探偵「それは‼あなた方「横浜中央生命病院」の救急救命士が強盗犯の
村市「俺達が強盗に加担⁉」
岩上「バカ言うなよ!」
闇探偵「しらばっくれてもムダです!」
闇探偵「ジュエルライフ横浜から一番近い病院はこの横浜中央生命病院!」
闇探偵「必然的に考えて119番通報で最初に駆けつけられるのはこの病院の救急車です」
闇探偵「当時その救急車に乗っていたのは救急救命士の村市さんと岩上さん……そして!」
スマホの画面を見せつける闇探偵。そこには
闇探偵「同じく救急救命士の江迫勢一さんの3人です‼」


