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第二十話『魑魅魍魎の世界』5/7

正明「……」
正明「……」
正明「そっちは何かあったか?」
口にしてから気がついた。何かあった場合、敵地のトイレから電話する己の間抜けっぷりに。

恭介『――異常はない』
斬『何かあったのかい?』
正明「いや……」
そう。こいつらが何処で待機しているかはオレすらわからない。
それに対人戦なら、こいつらが捕まるわけもない。
ならジャンとスケスケが裏切る……それこそ有り得ない。
百歩譲ってそういう事態に陥るとしても、なんの面識もない二階堂春樹相手には想定できない。

正明「……」
――よし!

最後の最後。蟻の一穴さえも塞ぎ終え今度こそ勝利を確信する。
正明「今日は気前が良い」
正明「ジャン。一時間後に近くの焼き肉屋を予約しとけ」
正明「あと間違ってもモチは呼ぶなよ」
事が上手く運びすぎているから警戒したが――杞憂だったか。
じゃあな。日本最強さん。


~~~~~~~~~~~~~~

正明「待たせた。それじゃあやるか」
春樹「うっしゃーい!」
春樹「あー、やっば。緊張してきた。かー、200か。あ、日本では初めて賭けるね。ちょっと背中に汗かいてきちゃった」
その言葉はウソではなく、本当に大金に逸る気持ちが伝わってくる。

金額もそうだが、副賞を欲しがっているのは間違いない。
もう腹をくくったのだろう。
ギャンブルをする、ギャンブラー独自の持つ目付きが伺える。

正明「……ッ!」
もちろん、それはオレも。
ほぼ勝てる。ほぼ。
確約ではない。
それにもしこのロクさんからの融資も溶かしてしまえば……その先は想像もしたくない。

ビールを飲んだはずなのに、酷く喉が乾く。
行くぞ――
行くぞ――!

200渋沢。必ず手に入れる!
場所決めとしてカードをめくる。オレが9。春樹が6。よってこちらがゲームをする上で一番有利なディーラーボタン。

なのだが、この場合二人なのでただのSB。春樹がBBだ。
春樹「あー、勝ちたい。あー。くっそ、やばいなー。落ち着かない」
正明「ッハ!」

熱が、伝わる。
金の価値が低い木葉や憂ちゃんじゃなく、オレや千尋といった庶民側の人間がよく発する、心地良い博打の熱。

勝負を切り開くカードが配られ――!

正明「オールイン!」
春樹「……」
戦いの火蓋が切られるのは初手オールイン。

『ボクはイカサマをしています』の宣戦布告。

絶対の自信を見せて振る舞う姿をじっと眺める。

春樹「……」
二階堂春樹はもう一度、自分のトランプの表面を確認する。

……表面。

あくまで表。カードの細工があるかの裏面は確認していない。

正明「ヒヒヒ、どうよ?」
ちなみに今、マークトデックのカードは使っていない。あくまで通常のトランプ。
今の時点でどんなにトランプの裏面を見渡しても柄の違いは生まれてこない。

そう。イカサマをすると宣言している以上、始めは様子を伺い疑念を潰しにくる。
本命だと目星をつけるトランプの細工を疑うがそこに今、変化はない。

春樹の後ろに用意された鏡。
中に機械が入っている軍手。
序盤はその考察がどれほどの早さで終わるかの駆け引き。

そして本命。
疑念が完全に払拭しこいつは『イカサマをしているフリだった』と油断した時こそが転換点。
どのタイミングでトランプを丸ごと入れ替えるかが勝負を左右す――。

春樹「コール」
対する初手。春樹はコールを宣言した。
正明「……」
春樹「ん? コール」
正明「……」
……ん?

春樹「ふ。ふふふ。あー。緊張するなー。うわー、勝って! ほしいなー……ったりゃ! K,9! 結構いいよー! ケーキュウ線!」
K,9。
弱くはない。弱くはないが、Aもなくゲーム早々のオールイン勝負に命を賭けるには到底値しないカード。
春樹「あああああ、ヤバい。ははは。うっわ、すっごい。膝超震えてるよ。いや、これでプロとか言ったらやっぱり笑われちゃうよね」
正明「……」

あ?
は? え、なんでこいつ……は?
ちょっと待て。
は?


――なんで乗る?

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