第十九話『重戦車VSミラーホープ』
◆【学園廊下】
性善説。
人間の本質は善であるというお花畑の思想。
それは今朝の事である。
望代「あの金髪と仲直りするからしゃぶしゃぶ奢れよ」
鏡望代の名を少しでも知る者であれば皆が首を横に振る。
しかしその相手は正統派お花畑の思想を持つ四光院斬。
斬「本当?」
望代「ん。モチウソついたことないし」
斬「わかった。約束だよ」
望代「やった! 豚肉な。ゴマダレだからな!」
斬「はは。わかったよ」
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斬「――という事があったんだ!」
正明「……なんで嬉しそうなん?」
斬「え、だってモチ、木葉と仲直りするって……」
正明「…………」
いやね。もう、こいつ笑えねーよ。
正明「ジャンってさ。絶対クソみたいな男に引っかかるよな」
斬「それは、自己紹介?」
正明「ちょっと真面目に聞け。ジャン。お前少しは人を疑え」
斬「マサ。言葉を返すがキミは少しぐらい人を信用しよう」
正明「……」
その後、どちらの言い分が正しいか昼食を賭ける事にした。
そしてその時はやってきた。
大胆不敵。唯我独尊。
我、風雪木葉也と口にしなくても一目でわかる小さな巨人。
生まれ持ってのオーラ。
他者を威圧する風格で今日も中央を我道として歩く絶対強者。
毎度お馴染みモーセの十戒となる掻き分けられる有象無象の人の先に、真っ向から道を譲らない意思を見せるのは混沌の黒魔術。
写し出す鏡は望みを与える
名をミラーホープ。
木葉「……」
望代「……」
合縁奇縁。
因果、運命、宿命、輪廻。
或いは同じ学園の敷地内にいればそういう日もあるというタダの確率論の話しかもしれない。
しかし一度顔を合わせれば話しは別。
正明(……おい。ジョン。インザン)
斬(斬だよ)
正明(初めに言っとく。止めるなら今だぞ)
斬(マサ。モチは昨日の事を謝る)
正明(お前鏡望代知らねえのかよ。性善説もいい加減にしろよ)
斬(大丈夫流石に今日もモチが悪い事をしたらボクも怒る)
木葉「……」
望代「……」
片や触れる者全てを踏み潰す黄金の重戦車。
片や触れる者全てを奈落の底に落とすGooglePlayPoint乞食。
妥協や余裕といった常識を一切知らずにここまで育ってきた両雄(雌)は一度ぶつかればそれは必然の不羈奔放(ふきほんぽう)
木葉「……」
望代「……」
絶対強者の幸運を持つ傍若無人――風雪木葉。
人を煽る世界ヘビー級チャンピオン――鏡望代。
両者は一歩も譲らぬまま立ち止まった。
木葉「――おい」
木葉「この風せt……」
望代「ペッ」
ビチャ。
ノータイムで放った鏡望代のツバは全てに畏怖される木葉の頬に直撃した。
木葉「……………」
木葉「…………………」
木葉「……………………………」
木葉「は……?」
自分に、この風雪木葉に向かって、目の前の女は何をしでかした?
頭が追いつかない。怒りよりも、発狂よりも、それよりも前にこの予測しえなかった現実に答えを求めて脳みそがフル回転した。
何故、初対面でいきなりツバをかけるのか?
その瞬間、常識人は間違いなく風雪木葉だった。
何故、と虚ろな表情で伺うと悪魔は力強くアンサーを言い放つ。
望代「ログインボーナス!!!」
正明「……」
斬「……」
木葉「フ……」
絶対君臨者として今まで何不自由なく周囲の人間を顎で使ってきた風雪木葉。
この時、生まれて初めて
木葉「きええええええええええええええ!!!」
君臨者自らの拳で相手を襲ったのだ!
望代「痛ッ、てめ、金髪! やめ、あ、引っ張るな! やめろって言ってるし、だから引っ張らな……おぐふぉあ!?」
良い角度のボディブローが炸裂した。
望代「おい! なに見てんだよカス共! 早くモチを助け……ぐへえあ!?」
木葉「しゃああああああああああああああああ!!!!」
望代「ぐ、ぐうううううううう!」
思ったよりも運動能力の高い木葉と運動音痴の具現化である望代。力の差は歴然である。
望代「がああああああ! おい! 一方的に殴られてる美少女誰か助けないのかよ!?」
望代「ハゲ呼べハゲ! ハゲ! おい誰かハゲ呼んでこいハゲ!」
正明「……」
斬「……」
正明(ジョン。インザン。ハゲ)
斬(うん。もうなんでもいいや)
木葉「きっしゃあああああああああああああああ!」
望代「居た! ハゲ居た! おい聞いてくれよ四光院! こいつモチが友達になろうって謝ったら言ったらいきなり殴って……」
正明「ペッ」
望代「うわ、汚ッ!」
望代「クソ人間、てめえ!!! 女の子の顔に向かってツバ吐くなんて……ぐっべあ! ちょ、ま、マジで、やめ……」
木葉「ああああああああああああああああ!!!」
望代「いたあああああああああああい!!!」
正明「おいついに木葉消化器持ったぞ」
斬「……」
斬「たまにはいいんじゃないかな」
溺愛していた娘を育児放棄をした瞬間であった。
正明「んじゃ、お昼しゃぶしゃぶな」
斬「……はあ」
こいつが本当にハゲたら、それって絶対ストレスだよな。


