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第十六話『上等なカレーに刺し身を乗せる暴挙』3/3

斬「二人は、前に付き合っていたんだ」
正明「――おいジャン」
木葉「はあっ!? こんなのと!? え、正明センス悪ッ!」
正明「ぐッ……!」
悔しい、これ以上ない侮辱! しかし、しかしこれに関しては反論できない黒歴史。

望代「正明?」
それは名前を呼んだのでなく、木葉がそう呼ぶ事への確認だろう。
木葉「ねえ斬。これ、日本語で元カノって言うんでしょ。普通そういうのって会いたくないんじゃないの?」
木葉「ただでさえ態度悪い寸胴じゃない。正明が可哀想よ」
正明「ほんとほんと。こいつの顔見ると吐き気が込み上げてくるのよ」

望代「なあ。赤ちゃん中絶した話ししていい?」
斬「は? え!?」
正明「お前マジで風評被害いい加減にしろよ」
当たり前だけどそんな事実はない
。というかこいつはさっきからウソしかつかない。

正明「つーかあんま調子乗ってんじゃねえぞクソ女。そういうのやるならモチが電車で漏らした話しするけど?」
望代「じゃあクソ原がパチンコ玉食べて病院に運ばれた話しするし」

和平の握手を求めたがそれを弾かれた。

木葉「日本の底辺層って思っていたより凄いのね」
望代「で、結局この外人のチビなに? 誰? モチ子供嫌いなんですけど」
木葉「あんたみたいな権威もわからないゴミ、スラムで見たことあるわ」
望代「時代劇見たらお前みたい眉毛いっぱい見たことあるし」
木葉「……」
望代「こういう外人かぶれが日本名名乗ってるのってすっごい気分悪いし。なあ。お前お箸使えないだろ」
木葉「あたしは日本文化は完璧よ!」
正明「……」

どうせジャンが二人を寄せて仲良くすれば、とでも思ったのだろう。
性善説を唱える四光院斬らしいお花畑の発想だ。

だけど現実はこれで、というかこの程度予想できないジャンが心配になる。

店員「お待たせしましたー!」
斬「わ、わーーー! すごーい、うん、美味しそうだね、うん! 食べよ、ね!」

藁にも縋る思いでと食事に意識を向けさせるが、
それにまんまとつられてあげるほどこいつらは人間できていない。

木葉「……」
望代「何睨んでるんだよ。お箸で食えよ。日本文化できるんだろ?」
正明「おい。飯食い終わるまで黙ってろ」
木葉「あんたが黙ってなさいよ乳首原イキ明」
正明「次言ったら顔面サッカーボールキックするからな」
望代「おい。正明の文句言うなよ。可哀想だろ」

あ、やっべ一番ムカつく。
こういう思ってもない事で私良いこと言いましたポジション取るゴミすっげ-ムカつく。
凄いなあ。
世界チャンピオンは色んな煽り技持ってるなあ。

木葉「……ッ!」

ダアン!

ついにと言うべきか、思いっきり木葉はテーブルを叩いた。
その後、店内含め静寂が訪れる。

木葉「なんなのよこのチビ!!! なんでこの風雪木葉がこんなゴミと一緒に食事しないといけないのよッ!!!」
気付くと席の周りにクリームを口につけた黒服がテーブルを囲んだ。
斬「木葉……」
木葉「正明。今回は譲りなさい」
木葉「あたしは今から――人を殺すわ」

正明「え? いや、ちょっと待ってよ木葉。流石にそれは道徳的観点っていうか、常識でそんな人を殺すなんてその……」
正明「オールオッケー!!!」

望代「つまんな」
正明「とりあえずオレが気が済むまで殴ってからでいい?」

ダダアアアアン!!!
次は店内の窓ガラス全てを割りそうなほどの強い力でテーブルを叩いたのはこのゴリラ女。

斬「三人とも。いい加減にしてくれ」
正明「……」

いや、どう考えてもお前だろ。
例えるならカレーにお刺身を乗せるような冒涜。
水と油。N極とN極。致命的に合わないんだ、こいつらは。

斬「マサもギャグが滑ったから殴るなんて人として最低だ」
正明「正論やめろぶっ飛ばすぞ。モチを」
斬「モチ。木葉に謝って」
望代「は? 何を?」
斬「わからないなら、これは食べちゃダメ」
望代「……」
いきなり3歳児を躾けるような口調に変わったが、当の本人は鼻で笑った。
斬「モチ」
望代「……」
斬「モチ」
望代「……ふん」
望代「わかったし」
少しだけ涙を連想させる鼻声で、望代はついに屈服した。
そのまま手元にあったクレープを握ると――!
木葉「――ッ」
それはあまりにも自然な動作故に、四光院斬ですら静止できなかった悲劇。
モチの放ったクレープがゆっくりと、弧を描くように――。
木葉「ふぎゅ!?」
顔面にクレープがぶつけられた風雪木葉。
そのままクレープは……落下していく。

木葉「……」
斬「……」
黒服「……」

場が、氷ついた。

望代「クソ金髪。てめえのせいでモチは食事にありつけなかったし」
望代「謝れよ金髪」
斬「……」
流石の斬も、顔が青ざめている。
モチとの付き合いが長いオレからすると、このレベルは予想の範疇ではあったが、果たしてジャンはどうだったか。

正明「……」
正明「ハイチーズ」

カシャ。
なんとなく写真を撮っておいた。
望代「ごめんなさい偉大なる鏡望代様。ほら、這いつくばって謝れよ」

木葉「――わかったわ」
ホイップクリームの固まりが、動いた。
正明「え、マジで?」
白人特有の綺麗な肌に白いクリームがお肌を優しくパックして、
中から現れたのは怒り狂う般若様。

木葉「あんたの遺言はわかったわ――!」
後日、結局木葉に土下座を繰り返し行ったジャンは自分の安易な発想を悔いたのであった。

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