第十三話『本当にしょうもねえ街』
◆【六道組】
正明「無利子無利息で融資のお願いにやって参りました!」
ロク「ほっほ。帰れ」
正明「冷たい事言うなよ。オレ、ロクさんと一緒に喋りてえってだけじゃん」
正明「そのついでに融資のお願いをだな」
ロク「ラシェルとやるのかえ?」
正明「――あの男女ぶっ殺すのは決定事項だから待ってろよ」
ロク「ふむ……」
その目にウソはないと、まだオレが日和っていない事を確認すると小さく頷いた。
ロク「それじゃあ竹ちゃん。今回は幾ら欲しいんじゃ?」
正明「えへへ、300」
ロク「無利息で?」
正明「はい!」
ロク「……ま、ええやろ。おい」
八木「おら、受け取れ」
奥に居る別のヤクザが言われた金額を持ってくる。
正明「うっひゃーーーー! ありがとうございます! 倍にした後に元本利息無しで返します!」
ロク「期限は一週間でいいかのう? 返せなかった時は、こっちで色々考えておくからのう」
正明「……おうっす!」
色々考えておくからのう。
埋められるとか臓器取られるとか、その大分手前。
恐らくこの金の"倍額"相当がグッチー先輩に請求行くのだろう。それが金かそれ以外かは知らないが。
ロク「ほっほ」
一瞬、オレが躊躇ったのを見逃さないロクさんは満足そうに微笑んだ。
もちろん――今回こんな危ない金を使う気はこれっぽっちもない。
次の戦いは人生賭ける勝負所じゃない。
こんなのはあくまでロクさんと話す口実に過ぎなく、今日訪れた本命は次の内容だ。
正明「そういや薩摩真司ってヤツ、知っている?」
ロク「……」
その名前を出すとただ硬直するだけだが、間違いなく怒りの感情が伝わった。
正明「あー、もしかして、そいつの右腕が二階堂春樹ってヤツ?」
ロク「竹ちゃん」
それは黙れと言う意図なのか、続きの言葉を探しているのか、しばらく待ってみたが結局次の言葉は出てこなかった。
正明「やべーヤツ? 二階堂春樹と、薩摩真司ってヤツら」
踏み込む。こっちとしてもお茶濁して終わるわけにはいかない。
視線が彷徨った。
どこから話すか。或いはどう振る舞うべきかを迷っているように。
長考の末に出したアンサーは、微笑みだった。
ロク「竹ちゃんはアホでおもろいしのう」
ロク「人情があるんじゃよ。ワシらみたいなヤツでも」
正明「……」
どういう意味だ……?
ロク「竹ちゃんが死ぬと悲しむ輩もおるじゃろ」
それが六道組組長の見解か。
二階堂春樹は実際に目の当たりにしたが、そう危ないようなヤツには見えなかったが……。
ま、オレの目なんかよりそっちの世界で生きているヤツ言葉の方が指標としては優秀か。
正明「どっちが危ないんだ?」
とは言えここではい、わかりましたなら今日訪れた意味がなくなる。
できれば二階堂春樹を揺すれるだけのネタ。
核心に触れなくても、そういった貴重な情報を持っているとアピールできる切れ端でもあればブラフとして活用できる。
ロク「少なくとも薩摩には会ったことはなさそうじゃのう。ほっほ。あいつに会ったら今頃竹ちゃん死んでいるからのう」
正明「はあ? 出会っただけで人殺す殺人鬼とか、ガチで危ない無敵な人かよ?」
ロク「そういうわけでもないんじゃが。竹ちゃんなら多分すぐ突っ込むじゃろうなあ。それで返り討ちにされると」
あー、煽りスキルが高いヤツか……。
確かにモチやラシェルみたいなカス共相手には引く事はできねえな。
正明「……」
そうなった時、その軽い挑発に乗ると命を落とすと。
なるほど。これはこれで案外貴重な情報だ。覚えておこう。
ロク「薩摩はただのアホじゃ。司令塔は二階堂じゃのう」
正明「オレさ。今テキサス・ホールデムっていうポーカーやってるじゃん? ラシェルがやってるゲーム」
正明「そんでその頂点が二階堂春樹みてえだから、多分このゲームやってると遅かれ早かれどっかで会うんだよ」
正明「で、そんときに揺さぶるネタが欲しい。そいつらが反応しそうな単語」
ロク「ふむ……」
読み合いを拒否して真っ向から事実を並べる。案外、この手の相手にはこれが一番有効だったりする。
ロク「西暮街で起きた警察殺しの主犯、稲村慎之介。この男が来週出てくるのう」
正明「本当にしょうもねえ街だなここ」
ロク「その男はあいつらと少し因縁があっての。わしらもあるが、まずはこいつを泳がせてみようかのうと思っているんじゃ」
正明「ほーん」
……まーた微妙な情報だな。
これ、ロクさんがそう言わせてプレッシャーかけるだけのブラフの可能性もあるし、その場合オレが完全に六道組の人間と色眼鏡で見られる。
面倒くせえが裏を取る必要あるな。
正明「稲村慎之介ね」
この街で警官殺しってなれば、記事漁れば出てくるだろ。その辺はスケスケに丸投げするか。


