第十一話『そのエンカウントの希少性』4/5
正明「……」
あれが二階堂春樹か。
まだ軽く喋っただけだが……やっぱラシェルにしろ憂ちゃんにしろ、あいつらと同じくクセがあるな。
さて……予期せぬ出来事だが、これでまた一枚カードを手に入れた。
つってもこのカード自体が使えるかどうかは知らないが……ま、使えないなら使えるようにしねーと、って話しなんだがな。
プロポーカープレイヤーとの繋がり。
これを金に変える……いくつか、選択肢はありそうだな。
その辺の戦略は帰ってからゆっくりと考えるか。
千尋「おまちどう様です」
オレの頼んだ醤油ラーメンと、春樹の味噌ラーメンが置かれる。
千尋「ごゆっくりです」
正明「……」
当然、千田千尋がごゆっくりですと口にした醤油ラーメンなんて一切口につけない。
奥にある味噌ラーメンに手を伸ばす。
正明「うむ」
味噌ラーメンである。身体に悪い添加物。高カロリー。しかし日本の心である味噌がどこかヘルシーさを印象づける。
千尋「ふふ……」
微笑みながらチッチーは男女共通である唯一のお手洗いに入っていった。
ってことは即効性の下剤か。バカめ。
正明「すみませーん。ボク、ちょっと用事で出なくちゃいけなくて、こっちの醤油ラーメン、もらってくれませんか? 手はつけていません」
客「え、いいんですか?」
危ない、怪しいでなく、きちんとオレの横で何も混入していない事を見ている一般客へのキラーパス。
正明「はい。こっちは手をつけてしまったんで、すみません」
客「ああ、いえいえ、それなら是非、頂きます」
うむ。この店の看板である醤油ラーメンだ。是非堪能してくれたまえ。
さて――。
店を出る。
そして向かいのコンビニに寄り、駆け足で戻ってくるとラーメン店のトイレを連続でノックする。
正明「おい……おい……!」
千尋「……ッ!」
なんか反応あった。
厨房を確認するが千尋の姿はない。うむ。十中八九千尋が中に籠城しているのだろう。
ドアの開閉部分に瞬間接着剤を隙間なく埋めていく。
その間、作業がバレないように強めのノックでカモフラージュを続ける。
千尋「……!」
こいつきっと、内心笑っているんだろうなあ……バカめ。
千尋(竹原正明。今、私がどれだけニヤけているか、お前にはわからないです……!)
正明(オレがウンコ漏れそうで必死にドアを叩いてるとでも思ってるんだろうに。バカすぎる……!)
扉を一枚隔てて笑いを噛み殺す二人。
どちらに軍配が上がるのか、既に答えは出ている。
たっぷり一本分、全て使い切りこの世界の隔離が完了。
さらば、千田千尋。君の事はちょっとぐらいは忘れないよ。
席に戻る時、さっき醤油ラーメンを口にした客と小走りですれ違った。
さあて。美味しい味噌ラーメンでも頂きますか。


