第十一話『そのエンカウントの希少性』3/5
春樹「ボクさ。塩ラーメンって美味しいのないと思っているんだ。札幌一番の塩ラーメンが世界で一番おいしくて、そもそも塩ラーメンなんかにお金を払うっていう発想がまずどうか思うんだよね」
こいつ結構喋るよな。
正明「……」
憂ちゃんの時も思ったけど、前段階で準備していないオレってすっげえ凡人だからな。
つーか、こいつ本当に二階堂春樹として、だ。
どう動くのがオレにとって一番プラスに働くか考えねーと。
春樹「もうさー。合コン行っても、みーんなボクの名前知ってて、右に左にうるさいんだよねー。ボクもう良い歳だし、そういう遊びはやめたいって言ってるのにさー。女の子が離してくれなくて」
正明「あー、わかるわ。特にヤりたくもねえ女が構ってちゃんだとマジうぜえよな」
春樹「ん、んん”! えー、正明君。その子、ちょっと紹介してくれないかな。ちなみに芸能人で言うと誰に似ている?」
正明「広末」
春樹「これボクの番号。24時間いつでも電話かけてきていいからねー。いやー、ボクも多忙だけど、正明君とはなにかの縁? っていうか、同じボコられた者同士、あれだ。な!」
どの広末かも言ってねーけど。
正明「んじゃオレも番号書いとくわ」
テーブルの上にあるティッシュに自前のペンを走らせる。
正明「春樹って中学生じゃないって言ったけど、何歳?」
春樹「え? あ、あははは! いいじゃないかそんな話しは!」
正明「未成年ってこと?」
春樹「嬉しいなー。でもなー。それもそれでなー。うーん、こういう時、どういう反応するのが良いんだろう」
春樹「ねえねえ。ボクって何歳に見える?」
正明「男でそれ言われたの初めてだわ」
春樹「ふうむ。あ、それじゃあ可能性の一つとしてはボクが男の娘という線もあるとしたら、ほら。どうだろう」
正明「春樹。日本語で喋ろ」
春樹「はーい」
めんどくせえなこいつ、と思ってお冷に手を伸ばしてふと、気づいた。
正明「……」
会話が、長いな。
いや、単にお喋りなだけなんだが……なんだろう。
特別面白くもないトークで場を作っているような。で、実際それから繋がる事もないんだが。それは相手がオレだからであって。
正明「春樹って普段から"こう"なんだな」
春樹「え、なにがなにが?」
正明「お喋りで、その喋りで自分の場を作るっつーの?」
春樹「えええ……つまんない? いや、面白くもないけど、じゃあ黙っていた方がいい?」
正明「ああ、いや。ポーカープレイヤーってのも色んな種類いるなーって」
春樹「そっか。そういえば正明君もあの日、ポーカーで大勝した後の帰りだったもんね。うんうん。納得」
正明「春樹もプロなら色々お願いされると思うけどさ」
正明「オレをテキサス・ホールデムで強くしてほしいんだけど、ポーカー教えてくれよ」
春樹「あー、意外。そこに繋がるんだ。ボクの事今まで知らなかったのに、あはは。買いかぶりすぎだよ。ボク、一応名前はプロだけど全然弱くて――」
『六道組が二階堂春樹を狙っている』
『組長の六道が自ら口にした』
『見つかったら命はない。これはオレの推測』
春樹「そうそう。日本に四人いるプロポーカープレイヤーなんだけど、その中なら絶対真の方が強いよ。確率ではあいつが頭二つぐらい抜きん出てるよ。ムッツリすけべだけどね」
表情一つ変えずにペラペラ喋れるのは、流石はプロポーカープレイヤー様ってとこか。
正明「えーと待ってね」
『とりあえず、適当に会話してトイレ行くフリして帰れ』
正明「そ。オレが今度西暮街のステーキ屋でステーキ合コン開くからさ。現役JKいっぱい呼ぶから。だから教えろよ」
春樹「ええええええ!? JK!? マジで!?」
春樹「ちなみにおっぱいのサイズはどれぐらい?」
正明「F」
春樹「ふぉおおおおおおおおおおおお!」
正明「やめろ! その鳴き声だけはやめろ!」
記憶に片隅に置いてあった闇の衣が……って誰が田代恭介や!
春樹「やっば、ちょっと興奮してきた。あ、電話だ。ちょっと待って。あーもしもしー!」
そうして春樹は店から出ていった。


