第七話『進藤&進藤』1/2
◆【自宅】
ゴオオオオオオオ!
オオオオオオ……ウゥぅぅぅ……。
会話ができないほどにウルサイ換気扇を切ると、家主は心底嫌そうな顔でタバコの火を消した。
正明「バカなのか?」
斬「仕方がなかったんだ」
奥菜「……」
状況が全くわからない奥菜はそのやりとりをただ見守っていた。
とりあえず目つきの悪い細身の男性は終始嫌そうな表情でコチラを眺めていた。
奥菜「あの、私お邪魔でしたら……」
正明「邪魔に決まってんだろ休憩代払えカス」
奥菜「……」
なんかこう……なんだろうか。
突然押しかけて申し訳ないとは思うものの、何故この街の男はここまで攻撃的なのだろうか?
奥菜「あの、この街の男の人ってみんなこうなんですか?」
斬「それはこの街の男の人に失礼だと思う」
正明「ぶっ飛ばすぞクソ女共」
一応、一応だ。客ということで水道水をもてなしてあげる。
正明(はあ。これツンデレっつーか。こういう真面目な慈悲の善意を見透かされてイラついたばっかりだってのに、甘いよなあオレって)
あまりの善意に感動したのか、その場に硬直した二人。
奥菜「……」
斬「……」
見ろ。舐めた態度取ってたゴミ共もオレの優しさの前に言葉を失っている。
奥菜「コーヒー頂けますか?」
正明「死ねよ」
奥菜「死ね……え、え? な、なんでそんな酷い言葉使うんですか?」
斬「彼は縛りプレイをしているんだ」
奥菜「すごい……綺麗なったらダメってバイ●ンマンみたいな方なんですね」
斬「ううん。バイ●ンマンはちゃんと手を洗うよ」
正明「ぶっ殺しますわよ?」
とりあえず竹原家が振る舞ったお冷に手をつけない知らない女を見つめる。
正明「で、こいつはなに?」
斬「……」
自然とアイコンタクトを取る形になるが、答えは出ない。
斬「友達……?」
奥菜「……」
奥菜「はい」
正明「……」
ぜってえウソ。まあ詮索するつもりもねえけど。
正明「ところで君、よく見たら可愛いよね。髪超キレイじゃん。シャンプーなに使ってるの?」
正明「ところで麻雀やる?」
奥菜「は……まーじゃんって、なんですか?」
正明「死ねよ」
奥菜「意味がわかりません!」
正明「……」
じんわりイライラしてきた。
斬「マサ」
タイミングを見計らったかのように、テーブルの上に未開封のタバコを置かれた。
正明「ゆっくりしていくといい」
奥菜「軽っ!」
ツッコミレベル4だな。並のちょい上ってところか。
芸人を目指すにはオレや木葉には遠く及ばない、まあ凡人ってとこか。
奥菜「この人……彼氏ですか?」
斬「は!? え、い、いやいやいや、違う! まだ彼氏じゃない!」
正明「こいつギャグボール使う友だち」
斬「――"正明"」
ちなみにジャンはあるラインを超えると、呼び方が正明へと昇華する。
奥菜「ギャグボール……?」
うんうんと頷く。
正明「まあ普通わかんねーよな」
斬「そういえばモチはどうしたんだい?」
露骨に話題逸らすじゃん。
まあいいけど。
正明「ネットのオフ会だって」
斬「オフ会……OFF?」
語源は知らねえけどそのオフなのかな?
斬「そういえば自己紹介がまだったね。ボクは四光院斬」
奥菜「インザンさん……」
斬「違う。斬が名前」
奥菜「私、進藤奥菜(オキナ)です」
正明「オキナっつーと、あだ名は沖縄だろ?」
奥菜「違います。ちょっと黙ってください」
笑いのセンスもないし金もない。
興味のない相手なのでと換気扇の下で今もらったタバコを開ける。
奥菜「あの、タバコやめてください」
正明「ここオレの家な」
斬「身体によくないよ」
正明「これオレの身体な」
奥菜「副流煙で私達にも影響あるんですけど」
正明「あーーーー、うぜえ女。つーか今更だけど、初対面のヤツなんでオレの家に連れてきたんだよ」
そう言われると斬はうーん、と考えた。
斬「男性に迷惑されている途中、ボクが助けた……?」
奥菜「……」
斬「……」
斬「あの、やっぱりプレイ中にボクが……」
奥菜「助けて頂きありがとうございましたッ!」
正明「……」
まーなんとなくわかったけどさ。興味もねーけど。
正明「ジャンも一々律儀だよな。ほっときゃいいだろこんな女」
奥菜「あの、一周して尊敬します。よくそういうの本人目の前にして言えますね」
正明「あ! そうだ。おい女。お礼しろよ!」
奥菜「アナタに言われなくてもしますよ。同然じゃないですか」
正明「オレには?」
奥菜「……?」
正明「……?」
斬「ごめんね。彼は日本語が不自由なんだ」
え、意味わかんねえ。オレ水出して上げたよ? ありがとも言ってねーだろこいつら。
ピンポーン。
正明「うぐ……ッ!?」
出やがった……!
なんで、どうしてだよ。そんなにうるさくねーだろ……!
あのお隣さん、マジで盗聴器でも仕掛けてんのか……!
今回マジでオレただの被害者だってのに……!
正明「てめえら覚えておけよ……!」
くっそ、……いやいやいや、そこまでは騒いでないはず、今日はやんわり嫌味言われる程度では済むはずだ。
斬「モチ帰ってきたんだ」
正明「あのアホがピンポン鳴らすほど人間できてるわけねーだろ……」
斬「じゃあこんな時間に誰が来るのかな?」
ピンポーンピンポーンピンポーン!
正明「今行きますッ!」
そうやって玄関を開けるとまるでドラマのワンシーンのような美少女が立っていた。
レイナ「……」
正明「……あ?」
レイナじゃん。何してるんだ?
レイナ「……」
チラッと標識を確認する。うちは律儀に『竹原』と表札を掲げているのを見て、うんうんと納得する。
レイナ「あのですね、レイナちゃん急な展開でいきなりマーサー登場したからなにか面白い事を言わなきゃと思っているんだけど浮かばないんだよねー」
流石オレと同レベルの芸人レベルを持つ進藤レイナだ。


