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第十一話『青春! スクールライフ!』4/5

◆【体育館裏】
△【イベントCG004・相棒の名は四光院斬】
斬「はッ――!」
恭介「ふん――」

一閃。
頭が置かれていた場所を刃が通過する。

刀のリーチ差を埋めるべく、身体が開ききったその懐に足を踏み入れる。
必殺の間合いを踏み入れようとするとその分敵も同様にバックステップで距離を取る。

二、三、四、と。
四方八方からの刃が線を重ね、それをかわしているほんの僅かな動作で、前進と後退の機微の差を埋められずにいる。

△【イベントCG039・恭介の戦闘】
恭介「チッ……」
恭介(見た目以上にリーチが長い……一つの斬撃は掴めないまでもかわす事自体に造作はない)
恭介(問題は追撃。二刀、三刀へと返し、返しの返しが早すぎて間合いに入り込めない)

体力勝負に持ち込めば勝機は必然。
こちらは心肺に対し刀を扱う相手は握力。
ほぼほぼ勝利が約束されてはいるシチュエーションではあるがそれではつまらん。

恭介(ならば――被弾覚悟で懐に入りその右腕を頂こう――)

剣の怖い部分は刀。
もとい、その抜刀速度と長いリーチ。

組んでしまえばただの人。
身長さえ斬が優位を取れているものの男と女。
生物としての腕力差を覆す武器を奪えば決着は一瞬。


斬「……」
斬(捉えられない……)
会心の抜刀をすれば、或いは――そう思うが、重心をズラしてまで切り込めばその隙を逃す相手ではない。

よって肩から先。肘と手首の返しだけと予備動作の少ない動きで頭部を捉えようと刃を返すが、恐ろしいほど俊敏な動きでかわしていく。

斬「ふぅ……」
恭介相手に無傷なんて都合が良いか……。

それなら――懐に誘い込み、全力で叩きつける。

すうぅ、と残像を残しながらのゆったりとした刀身の動き。
下から左、そして上へと時計の針のように12時を指すと、その切っ先を考えなしのようにぼんやりと恭介は眺めて――
――ノーモーションで飛び込んできた。

斬「はあっ!」
迎撃すべく首から上を消し飛ばすつもりで刀を振るうが、そこは空。

それが通じないのはお互い理解の上で――。

恭介が前に出た分後ろに下がり、間合いを保ったまま刃を返す。
二、三、四、五……すべてを紙一重でかわし、重心が思いっきり傾いたそこに、
斬(好機――ッ!)
全力で、両手持ちに切り替え力の限り振り下げた。

狙いは頭部でなく確実な胴体。
薪割りのような力を入れたその一刀は、身体全体を狙ったもので転ばせるには十分のはずの威力で――、
斬「……ッ!?」
かわされる――ッ!

必中のタイミング。
寸前のところで体制を整え、バックステップをするが目の前の相手はさらに大きくなり――

恭介「甘い――」
斬の右腕に居た恭介が一瞬で左へ。刀をくぐると言うより、身体一つ分の瞬間移動を見せるが追撃もゆるまない。その先を刃が後を追い――、

頭部を捉えると同時に、刀が宙を舞った。

斬「ぐ……!」
武器封じの目論見は見事叶い、剣が舞う音と同時に重なる小気持ち良い音は斬の死を連想させる右手首を掴む捕食の効果音。

そこからは駆け引きもなく、一瞬で背中に手を回されるとそれで人間は終わり。

関節の作りが違う人体など存在しない。故に、力差が絶対である関節術がここでは勝敗を決すると――

――油断をしていた。

恭介「がは……ッ!」
背中を欲する恭介の望み通り、後頭部を見せながら髪の毛が踊るのが視界に入ったのが最後、

次の瞬間視界は暗闇。

3メートル……5メートル……長い時間宙を舞い、ガガガとブレーキをかけるように両足を引きずりながら着地をする。

恭介「ぐ、ごは……貴様……!」
感覚を失った左手を開閉し感触を確かめる。

たまたまおいてあった腕で防げた幸運に顔をしかめると、対象を睨みつけた。

恭介「……ッ!」
恭介(なんて剛力……! なんて発想……!)
恭介(あの体制からの返しの一刀に身体の柔軟さ。防いだ後、極められる方向に抗わずに回し蹴り……それも、なんて膂力)

斬「……」
斬(すごいな……)
しみじみと、素直な感想だった。

攻撃をすべてかわして、それが既にフェイントだった。
最後の最後、重心が偏った時に放った一刀。あれはどんなに早く動こうと必中のはずだった。

それを瞬間移動。
それだけじゃない。斬撃を"いなして"からの移動。
考えてみれば恭介ほどの使い手が太刀筋を予測できないわけじゃない。

無意識に放った回し蹴りがたまたま当たって、たまたま掴んでいた腕を緩めてくれただけ。
あの時、本来はもう決着していた。

ただの反射と、恭介の油断に漬け込めた二つの奇跡があっての今だ。

恭介(男女差で腕力に決定力が異なる等、甘い妄想だ。偶然腕に当たらず、腹を正確に仕留めていたら今頃俺は床に伏せていた)
斬(武器を持たないというのに)
恭介(筋力の劣る女というのに、だ)

斬 恭介((強い――))

恭介「褒めてやろう侍よ。吾(われ)に魔界の力を使わせる気させるとはな――」
斬(そういえば吾の日はけっこう久しぶりだなあ……)

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