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第七話『クラス保有者の実力』3/5

▲【11/14】
◆【ホテル個室】
日本のプロポーカープレイヤーは僅か四名。
その中でも誰もが別格だと唱えるのがこの二階堂春樹。

リングでもトーナメントでも実績やプレイスタイル含め、頭が一つ二つ飛び抜けている。

そしてそれは表の世界での話。

この男が活動する裏の世界でも、二階堂春樹を知る物はその存在を畏怖する。

『リジェクト殺しのピーターパン』

中学生にしか見えない童顔は30歳を超え、表裏共々数々の実績を残している。

二階堂春樹からすればこの世界に生きている以上、予期せぬ自体は多々ある。

それでも――。

春樹「……」
それでも、この間の出来事はこれまでの人生で経験をしたことがなかった。

ヤツは『キチガイに刃物』と揶揄したが、これ以上の上手い例えは見つからない。

"イシュタム"

アレだけは、絶対に敵に回してはいけない――。

コンコン。
スタッフ「二階堂様。お客様がお見えになりました」
春樹「おっと……」
目的の人物が現れたようなので、もう一度鏡で髪型を確認する。

春樹「はーい。通してくださーい」
ドアが開くと、そこには紫に包まれた老婆。

いくら日本NO1の称号を得たとしても、この日対面する相手は生きる伝説。

テキサス・ホールデム原初の魔女。
生きる伝説、ダリア・グリフィス。

従来は年齢とともに枯れる活力。
しかし目が合うと、それはこの老婆に限っては間違えた認識だとわからされる。

覗かれる、というよりスキャンされるような、そんな不快な視線を向けられるのはポーカープレイヤーの証であるとも言う事ができる。

春樹「初めまして。本日はご足労頂きありがとうございます。日本ポーカー協会の二階堂春樹です」

視線を感じない。
きちんと日本式のお辞儀をするが、対面する老婆は形の礼儀を見ていないのだろう。

ダリア「こんな老人をわざわざ招くなんてわからないねえ。もっと身体が丈夫な輩がいるだろう」
春樹「本日は是非、ダリア様にお伺いしたい事があります」
頭を下げたままに言うが、それでもまだ視線を感じない。

壁や周囲の確認。防音や武器、盗聴器の類を探しているのだろう。当然だ。初対面のこちらに信用はない。

もしくは別のナニカを観察しているのか。
伝説のポーカープレイヤーだ。その辺は当然だろう。


席に座らせるて飲み物を入れる。

ダリア「単刀直入に用件を聞いてもいいかね? 腰が痛いんだ」
短く頷くと本題に入る。

春樹「ハルトムート・アインホルンがランドカジノ廃止への工作活動をしている事実はありますか?」
ダリア「知らないねえ。なんでそれをわざわざ私に言うのかねえ」

表情を変えずにとぼけて見せるが、相手は世界屈指のポーカープレイヤー。言い換えれば世界屈指の嘘つきである。

春樹「同じ協会であるダリア様でも存じ上げないのでしょうか」
ダリア「本人に聞けばいい。わざわざ私を挟む意味がわからないねえ」

嘘を活用する世界に生きるのは、春樹も同じだが――。
さあ、面倒な駆け引きの始まりだが、互いにポーカープレイヤー。
カードの切り方は専門中の専門。

駆け引きは相手の土俵ではなくコチラの土俵でもある。

春樹「この問題を知りたければアナタを頼れとある者に言伝を受けました」
ダリア「誰だいそれは」
春樹「……」

いきなり核心部分に触れる。

春樹「その者は――イシュタムと名乗っていました」
ダリア「イシュタム……あの、テロリストかい? 確か、何年か前に死んだんだ聞いているねえ」
春樹「……」

え……まさか、イタズラ……?
思っていた反応とは違う。そう。イシュタムなんて今ダリアが口にした通り、過去の人物。
普通に考えればハルトムートと自称イシュタムの方がおかしいではある。

大失敗だ。
結局、デマに踊らされた自分がアホで、無駄手間だったと伺える。

"―ような、顔を見せる"

ダリア(……なるほどねえ)
――ガキの使いじゃない。

目の前の二十歳に見える若き青年は一級品のポーカープレイヤーだとダリアは認識を一つ改めた。

ダリア「興味深いねえ。イルデブランドに敗れて犬の餌になった画像が当時出回ったねえ。あれを名乗る女性が出たってことかい」

ともすれば、結局こちらに乗らなければ意味ははい。
牽制で終わるだけなら無駄骨となんら変わらない。

ポーカープレイヤーとなれば、互いにしらばっくれるのを数時間こなす忍耐力も持ち合わせている。

となれば、必然的に魔女の次の引き出しをこじ開ける必要がある。

カードを切るリスクを強いられるのは、あくまで要望した二階堂春樹側に強いられる。

春樹「……」
一瞬思考を巡らせるが、選択肢はない。

仮にもし本当にイシュタムが偽物だとしても、こちらが丸裸にされた以上まずはそのまま赤裸々にぶつかってみる。

春樹(うーん、人間やっぱり正直が一番だもんね)

春樹「ハルトムート・アインホルンは自分の正体を明かさず、ボクとの会話でその女性が生きていると証言していました」
春樹「今振り返ってようやく結論に至りますが、恐らくハルトムートはイースタンかスコーピオンと勘違いさせたかったんだと思います」
春樹「あと、ボクは自分でイシュタムと名乗る女性とこの街で出会いました」
ダリア「この街に……? あいつは確か、香港だが、シンガポールだか……忘れたけど、確か他のアジアの国だっただろう」

流石魔女。大変にお優しい。
今、わざわざ"私は知らないんですが? という茶番を見せる"信号を送って頂いている。

春樹「黒髪ウェーブの女性がバーバに聞けと言っていて……」
ダリア「……」
表情に何ひとつ変化がなかった"という変化"を、この時春樹は感じ取った。

否、"感じ取らせてもらった。"

春樹「もし信じてもらえなかったら、これを渡せば一気飲みしてなんでも喋ってくれるよ、と言っていまして……」

シャトー・ラトゥール。赤ワインの一種らしい。

ダリア「……」
ダリアは小さなポーチからスマートフォン……のような物を取り出した。
するとピーと機械音が鳴るのを確かめ、それをカバンに戻した。
ダリア「……はあ」
観念したようにため息を漏らした。

ダリア「あの御方はまた適当な事を言って……あたしゃ酒なんて飲まないねえ」
春樹「え?」
ダリア「これはあの人が好む酒だ。あたしゃいらないよ」
春樹「……」
春樹(あたしゃいらないよ。今のちび○子みたいなあ)

ダリア「まず、自己紹介をしてくれないかねえ。あんた普通のポーカープレイヤーじゃないだろうからねえ」
春樹「……」
そう。実はそういうの調べてるっぽいんだけど、自己紹介も何もバックボーンなんて何もない。

とはいえ先日の一件がある以上、ハッタリをしてすぐにバレたらそれこそ立場を悪くするだろうと思い、ありのままを喋る事を決断した。


春樹「初めまして。日本プロポーカー所属の二階堂春樹です」
春樹「それは表の顔で、AMAYA社と遊戯連から支援を受けています。日本のプロポーカープレイヤーの立場からWS社のランドカジノ廃止させる事が目的です」
ダリア「それじゃあハルトムートと一緒だねえ。あっちはAMAYAじゃなくて銀河だろうけど」

銀河……銀河? 何故?

ダリア「AMAYA社と遊戯連ねえ」
春樹「はい。仰る通りAMAYA社と遊戯連は金だけもらって裏切るつもりです」
ダリア「清々しいねえ。それじゃああんたの後ろに居る本当の組織を教えてもらおうか」
春樹「……」

組織……そう言われると本当に困るんだよなあ。ボクってどこの組織なんだろう。
ちょっと考えてみたが、そのまま伝える事にした。
春樹「組織はありません。ボクと、もうひとり。二人でとある団体を狙っています」
ダリア「それは、言えることなのかい?」
春樹「……」

恐らく、ダメだろう。

だが今回、敵が本気を出したら命がなかったのに延命ができている以上、少なくともそれを看破した眼の前の組織には赤裸々に告白した方が理になる事に賭けた。
春樹「カナダのカジノ産業の双璧。ColonyFords(コロニーフォード)社を潰します」
ダリア「……?」
ダリア「は?」

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