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第六話:『オッドアイの万能執事後編』1/4

◆【モードゥス】
静かな通りに面した、ミニマルで洗練されたイタリアン・カフェ『モードゥス』
木漏れ日が差し込むガラス張りの店内では香ばしいエスプレッソと焼きたてのフォカッチャの香りが立ちこめる。

女性に人気の魅力に溢れたお店作りには、さらに看板店員が居る。

身長172cm(←超重要!!!)のスリムな体型に、シンプルな白シャツと黒のエプロンがよく似合う。
で少し前髪で隠れた甘いマスクの奥から覗かせる左右で色の違うオッドアイ。

海と森を映したような瞳が、訪れる客をふとした瞬間に惹きつける。

恭介「おまたせしました。こちらソイミートのベジチーズハンバーグにウィーガンサンドイッチになります」
客「キャー、美味しそうー!」
客「あの、写真撮ってもらってもいいですか?」
恭介「はい。もちろんです」
客「あ、その……一緒に写ってもらって……」
恭介「ボクとですか? もちろん光栄です」
客「キャー、早く、ミク、ほら早く撮って!」
客「はい、チーズ……OK! あの、私も……」
恭介「はい。構いませんよ」
カランカラン、と来店を告げる鈴が鳴る。

目配せをしてみるが対応できそうなスタッフは見当たらないので今の接客が終わり次第自分で迎えると次の行動を確定させる。
客「あ、ありがとうございます!」
恭介「はい。ごゆっくり料理をお楽しみください」
それは彼にとって何気ない日常となりつつある。


後に――
――誰かが言っていた言葉を思い出す事になる。

恭介「いらっしゃ――」
――平穏は、失って初めてその大事さに気付く。


望代「あーん、素敵なお店ー! こんなキレイな店知っているなんてダーリン最高!」
正明「妬けるじゃないかハニー! しかし可憐なキミが心奪われるのも頷ける! ボクが見てもとても良いお店だね!」
恭介「…………………」
25度の快適な店内で一瞬にして汗が吹き出た人生で初めての経験。


突発性の耳鳴りと心臓が脱走を試みるほどの早い鼓動。
大量に滲む汗と裏腹に寒さで鳥肌が立つ。


望代「あは、凄くオシャレのお店。可愛いモッチーにピッタリだニャン。ダーリンはよく来るの?」
正明「もちろん。ボクは常連さ! この店のメニューも女店員も全て頂いたよ!」
望代「うにゅにゅにゅ~~~~ん!」

恭介「……ッ」
恭介(これが、かつてノストラダムスが予言した――!)

入ってきたのは客ではない。
人間でもない。
それは爆弾……いや、原子炉か。少しでも傷つければ周囲に致死量を達する害を撒き散ら爆発し、その痕跡は未来永劫へと続く害を振りまく厄災。


正明「今座れますか?」
恭介「……」
本能で顔を伏せ、手の動きだけで誘導する。

望代「お腹空いたぷ~。モチもオシャレなランチを堪能するんだぞい」
正明「だな、腹減ったよな。ベルトが切れるまで食べてやるぞい」

恭介(気付いていない……? そんな都合ほ良い解釈……否、そう、か。そうだな。今のオレは、あいつらの知っている容姿とは異なる)
恭介(それならばまだ……ッ!)

薄っすら、消え入りそうなか細い光に縋る(すがる)。

恭介「少々お待ぢぐださい」
いつもと違う声を低めの声を出そうとしたが、上手くいかない。反応は伺えないのでそのまま俯きながらカウンターの奥へと戻る。

正明「……」
望代「……」
正明「……ッ!」
望代「……く、くふッ……く……」

まだ笑うまいと自分の腹を何度も殴り続ける二人。

しかしそれはあまりにも酷なことで、ヴァイリンガルの万能執事を相手にはかなり厳しい。

正明「あのチビ、チビじゃな……ヒ、ヒヒヒヒ……シークレットブーツ……ヒヒ」
望代「くふふふ、カラコン……なんで緑……!」
正明「つーかなんだよあの声……」
望代「なんでモテるのかわかるし……くふふ、誰だよあのイケメンオッドアイ……」

あー、最高。もう今日プラスあるわ。

そそくさと厨房に戻って行くのを見届けると、ようやく邪悪な笑みが介抱された。

正明(茶化して終わりかと思ったか? まだまだ終わらねえんだわ)
望代(当ったり前だよなあ)

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