第五話『勉強すべきはポーカーかおっぱいか…!』1/6
◆【リレイズ北村】
憂「レイズ――5,000」
正明「……」
カードを中央に捨てる。
憂「うん。正解だね」
そういって見せるカードはブラフ。だがそのブラフ相手に、現状は負けている。
憂ちゃんはゆらりと亡霊のように立ち上がると、ギャップを見せるようにビシッと人差し指を立てた。
憂「じゃじゃーん。憂先生のポーカー教室~!」
憂「はい!」
正明「……」
はいじゃねーよ。やれってか。
つってもオレ、本職はお笑い芸人だから乗るしかねーんだよな……。
正明「じゃじゃーん!」
憂「……」
憂「うん! 及第点はあるよ!」
正明「満点付けてよ!」
で、気を取り直してっと。
憂「今日はフラッシュ時の相手の潰し方を教えるね」
言うまでもなく、フラッシュとは同じマークが5枚。例えばハートが5枚揃うなどである。
正明(それはいいな)
役としてもかなり強い部類にはあるが、出現率を考えると最強とも言っても過言ではない。
もちろんその上にフルハウスやフォーカードはあるものの、一日に一回出るかどうかの役を考えれば実践的ではない。
憂「色々シチュエーションはあるけど、全部やると話し長くなるから今のケースを前提に指導を行う!」
憂「はい!」
正明「じゃじゃーん」
憂「あは!」
満足そうに頷くと講義が始まる。
正明の手札は4,Js。ボードは3,Q,Kでスペードが2枚。
(sというのは同じスーツ。例えばハートが二枚。スペードが二枚など。反対にバラバラの色はoと表記する)
フロップの時点でスペードが4枚。
4枚目のターンカード、5枚目のリバーカードでスペードが落ちればフラッシュ成立で逆転できるものの、その確率は5割を下回る。
スペードが落ちる確率。
ハート、ダイヤ、スペード、クラブとあるので1/4が二回。
即ち50%。
――ではない。
そんな考えはド素人であり、実際の確率はもっともっと低い。
憂「今のシチュエーションで降りるか乗るか。それは状況によって左右される難しい判断を迫られるんだけど、答えがわかっちゃえば簡単だよ」
憂「あと1枚スペードが落ちればフラッシュ。そうなればほぼ勝利が確定される。正明君からすると、次のカードが見たくてたまらない。それも、できればノーリスクで」
そう。落ちる確率は低い。
が、ノーリスクで見れるならば最高のシチュエーションだ。
もし次にスペードが落ちればナッツ(最強)と言っても……まあ正確にはスペードのエースでなければならないが、それでもこのシチュエーションならJフラッシュも別にまあ最強と言っても過言ではないだろう。
憂「それを許さないためのレイズ。ここはポットの大きさ関係なく、ポットの半分(場に溜まったチップの総量)を出せば初心者以外は降りるよ」
そう。ターンカード、リバーカードと2回チャンスがある。
25%が2回ならば勝率50%と運ゲーをしても、とも思うがそうじゃない。
スペード13枚のうち4枚消費している。
4枚の内訳は言うまでもなく手元のカードの「4とJ」
そして場のカードの「3,K」が見える。
つまり残りは9枚。
2,5,6,7,8,9,T,Q,Aとなる。
52枚のうち、自分のハンド2枚と場の3枚を引いた合計5枚を52から引いて、47。
ターンカードでスペードが落ちる確率:9÷47=19.1%
リバーカードでスペードが落ちる確率:9÷46=19.5%
合算すると、38.6%。
38.6%で、フラッシュが成立する。
憂「ちなみに正明君。この時スペードが落ちる確率はわかる?」
正明「38.6%」
憂「ブッブー」
――あ?
もう一度ボードを見る。
なんだ。ゼロヒャクの何かがあるのか。もしくは何処かにスペードを使った要素を見落としていたのか……。
憂「うん。ふつーに計算間違いだよ」
正明「……?」
4,Js 3,Q,K(スペード4枚)
残り47枚中、スペードが9枚 → 非スペードは38枚
ターンで非スペードが出る確率:38 / 47
リバーでも非スペードが出る確率:37 / 46(ターンも非スペードだった前提)
(38/47)×(37/46)=34.97%。
憂「重複確率を考慮しちゃダメだよ。正明君の計算だと、両方ともスペードになるケースも入ってるんだね」
正明「……」
だっせええええええええええええええ!!!!
したり顔で計算して数字強いですでドヤったのに、普通にチョンボかよ。うわ、マジでだせえ。
正明「ありがとう憂ちゃん。勉強になった!」
憂「うん。勉強はこれからだけどね」
そう。で、フラッシュの潰し方だ。


