第十三話『弟子と師匠と友達と』4/6
◆【海上カジノ】
木葉「バイイン(持ち込み点数)20,000。BB/1,000。SBは無しで行くわよ」
そりゃまた随分な運ゲーだな。
チップ1,000点チップ10枚が配られる。フロップ前にレイズしようものならあっという間にオールイン勝負になだれ込むだろう。
木葉「……おい。準備しておきなさい」
瑞花「かしこまりました」
梨花「かしこまりました」
対戦相手は本人は急ぎで走っていった。
正明「小便か?」
木葉「潰すわよッ!」
あー、はいはい。思春期ね。
さっき木葉の左右に居た付き人がテキパキと準備を進める。
瑞花「……こほん」
会話を伺いたいのか、こちらの様子を見ながらタイミングを見計らったメイド。
瑞花「竹原正明様と伺っております」
瑞花「貴方はテキサス・ホールデムの世界上位100名をクラス保有者と呼ぶのはご存知でしょうか?」
正明「ううん。知らない。キミが瑞花ちゃんだっけ。声可愛いね」
梨花「その中で世界頂点13名のキング達。クラスキングで、通称CKなのですわ」
正明「へー」
瑞花「日本人のプロポーカープレイヤーでは、誰一人その枠には入っていません」
正明「そうなんだ。瑞花ちゃん、今彼氏いるの? 今度一緒に遊びに行かない?」
梨花「あなたが今から戦うお方は、そのCKの一人ですわ」
正明「うるせえな喋んなよどっか行け」
梨花「なんですのこの差は!?」
正明「瑞花ちゃん、どこ住んでる? 西暮から近い?」
瑞花「その、そういうのはちょっと……」
梨花「話聞きなさいよッ!」
正明「うるせえな。まだ居たのかよ」
梨花「居ますわよっ! あなた私の事を知らないからそうやって……私はこれでもあんたなんか比べものにならないとんでもない名家の生まれで……!」
木葉「うるさいわね」
梨花「いい加減にしなさいよこの我儘ナルシスト!」
木葉「は?」
梨花「……え?」
瑞花「……」
正明「……」
木葉「……」
梨花「あ、あ、あ、ああああ!
梨花「あのののの、これはちががが」
梨花「わ、私は風雪様に逆らう気は微塵ももも、髪の毛一本たりとも、もももも……」
木葉「……」
パンパン、と手を叩くと黒服がすぐに寄ってくる。
木葉「カタツムリの刑」
梨花「あああああああ!!! それだけは!!! それだけはああああああああ!!!」
瑞花「……」
木葉「で、何話してたのよ」
正明「こういうキャラ被りが二人いる時ってのは、片方持ち上げて片方貶めば勝手に自爆して1vs1に持ち込めるんだわ」
木葉「あんたゴミね」
正明「これダウンジャケット!!!」
ったく。
……ん、待てよ。
カードが配られる。そういや今、なんか……。
正明「あー……なあ。木葉って世界ランク13番に入るほどポーカー強いとか言ってたけど、マジ?」
木葉「はあ?」
正明「ッハ。だよな」
木葉「……は~」
瑞花「そ、それは風雪様の凄さを、この人に知ってもらおうと……」
木葉「あたしは風雪木葉よ」
木葉「あんた達みたいなのにわからないわよ」
チップが全て投げ出される。
木葉「オールイン」
ぐッ……。
ヘッズアップ(1VS1)の勝負。それもBIGブラインドが1,000点の短期決戦のチップ総量となればオールイン戦法は悪くない。
フロップカードを見る前。先が見えないとしても、この時点で勝率が7割近くあれば良いと判断したとなれば良し。
1vs1なら憂ちゃんと死ぬほどやった。確率もある程度頭に入っている。
7割っつーと……9以上のポケット。99,TT,JJ,QQ,KK,AA。
65%ならAKs、AQs、AJs。
(※AとKの同じハート柄。同じ柄をsと表す。別の柄はo)
正明「……」
KQsなら63%。ちなみに63%というのは100分の1を100回転回して当たる確率で、金髪海女のクソクソクソと同じ確率だ。
――オレなら63%までは下げられない。
ブラフならいい。降りれば取れるから。
だが受けるとなると、それなりの確率が求められる。
その"それなり"をどこに線を引くのか――ヘッズアップの腕の見せ所だ。
木葉「超難関大学に主席で卒業とか。年収数億とか。高級マンション保有しているだとか」
木葉「あとはそうね。白人だのアーリア人だの、貴族だと王族の血統もそうね。ああ、飼っているペットが可愛いとか。高価な芸術品を持っているとかかしら」
木葉「――眠くなるわ」
正明「……あ?」
このチビいきなり何言って……。
木葉「特にあんた、日本人でしょ。そういう何か肩書持ってるから凄いって発想強いわよね。確か権威主義だったかしら」
木葉「あたしにはそれ、サッパリわかんないのよ」
正明「……」
ま、オレのカードは62o。勝負に行けない。
中央にカードを捨てると、わざわざ表のカードが降ってきた。
63o。オレの一つ上を見せつける。
ぐ……!
CK。なるほど――ポーカープレイヤーっつーわけだな。
初手オールインはこのチップ差なら常套手段。リスクは含むものの、AK以上でなければ乗ることはできない。
木葉「オールイン」
だからって連発してんじゃねーよ!!!
正明「ダウン」
連続オールイン。単純かつ効果的なアクションにカードを伏せるが、次もまた不必要に自分のハンドを見せつける。
木葉「今度は降りて正解ね」
AA――最強の手、バレッツ。
ぐ……。
1/200。そんな確率の薄いカード。
正明「……ッハ」
……表情を読むのは苦手じゃねーんだがな。
今のバレッツは偶然で――問題はそこじゃない。
問題は、クソカードとバレッツ。どちらも見分けが付かなかったこいつのポーカーフェイスだ。
木葉「船持っててヘリコプター飛ばしたから凄いんじゃないのよ。わからない?」
木葉「あたしは、風雪木葉よ」
正明「……あん?」
なんだ?
それはつまり――。
木葉「あたしは、風雪木葉だから凄くて強いって言っているのよ」
正明「そういう事だよな」
ハハ――うっぜえ!
いいじゃん木葉。そうだよ。コイツそういうヤツだったよな。
いいねえいいねえ。
――ちょっとイラついてきたわ!
正明「じゃあその木葉ちゃんをねじ伏せれば、竹原正明君こそが凄くて強いってなるけどいいのかよ?」
木葉「そうね」
木葉「せいぜい頑張るといいわ」
ヒヒヒ、吠えたな――!


