第十二話『ゴミ袋を乗せた豪華客船』3/6
◆【大広間】
大広間に出る。
船の上で大広間ってのもおかしいけど、まあおかしい船なんですよ。
で、千尋はいねえ。
まああんなの居ても喋ることなんもねーしいらねーけどさ。
ッハ。
こんなんならジャンかスケスケ連れてきた方が暇潰せたっつーの。あー、モチを突き落として遊ぶのもよかったな。
そんな事を思いながら食料を探したが、ホテルのバイキングみたいに銀色の……なんつーんだっけ? あるじゃん。手元にあった皿も確保。
中はなにかなー。お。魚の煮付け? すげーうまそう。
おお。こっちはジャガイモか。ッハ。でけえ船の割にメニューは貧相だな。キャビアと大トロオンリーとか思ったのに拍子抜けよ。
おお。うめえ! うめえうめえ!
貧困層である正明は即落ち二コマになる。
??「こんにちは」
ねっとりとした、それでいて上品に聞こえる女性の声。
声の元に視線を投げる。
相手は紫に包まれた気品のある白人の老婆。どう見ても外国人なのに、無理して日本語を使ってくる違和感。
正明「こんちわっす」
もちろん面識はない。おばあちゃんはきっと暇なのだろう。
??「……」
??「お名前を聞いてもいいかねえ?」
正明「竹原正明。正しく明るい正明と呼んでくれ」
自分で言ってから本名を名乗っちゃったと気付いた。
まあもう二度と会わないだろうから別にいんだけど。
??「フフ……竹原正明ねえ……」
お。こっちには肉あんじゃーん。つーかこのお婆ちゃん日本語上手いな。
??「私はねえ。竹原正明の事を知っているんだよ」
正明「……ん?」
この後水晶で予言したのさと言いそうな胡散臭いキャラである。
というかそうじゃないと逆に困るわけで、グッチー先輩やロクさんの知り合いだと非常に面倒な事になる。
って普通に考えて木葉主催なんだから木葉だろ。
まあいいや。
おお。麺もあるじゃん。スパゲッティいいね!
と、箸にも棒にもかからない相手を適当にいなしていたが、その共通の人物の名はあまりにも予想外だった。
??「"北村憂"からよくキミの話を聞いているねえ」
正明「――あ?」
単純に驚いた。まさかここで憂ちゃんの名前が出るとは。
??「曰く、将来日本の頂点に立つポーカープレイヤーに育つとか」
正明「ッハ」
んな事言うわけねーだろとか反射的に思ったが……憂ちゃんなら何を言うか全く想像つかない。
ダリア「私はダリア・グリフィス。どうかねえ。これもなにかの縁だし一勝負」
正明「ほう……ッ!」
まさかこんな老婆に喧嘩を売られるとは、面白いもんだ。
――いいぜ、
オレは竹原正明。オレを煽るヤツは絶対に――……、
正明「……」
820円で……?
(※840円と思ったが盛っていた。本当は820円でした)
正明「あー……」
そんな情けない事を言うのも気が引けるし、とはいえない袖は振れないからな……。
ダリア「ルールもレートもなんでもいいよ。私はただ、竹原正明に興味があるんだよ」
正明「……」
言ってることはわかる。
仮にオレも憂ちゃんが育てているプレイヤーがいると聞けば、損得抜きに是非とも見てみたい。
正明「北村憂とお婆ちゃんはどういう関係か聞いてもいいのか?」
ダリア「フッフ。ただのビジネスパートナーさ。それ以上でもそれ以下でもないねえ」
ビジネスってそういや憂ちゃんって何してるんだろうな。つーか当たり前だけどあんな人のいないポーカー店だけなわけねーか。
??「マーサーさーん!」
レイナ「イェーイ! レイナちゃんでーす」
正明「いぇーい」
レイナ「イェーイ! あはは、私達何してるんでしょうね」
ダリア「可愛い女の子だねえ」
レイナ「あ、すみません! お話中でしたか」
ダリア「ああ、別にいいさ」
ダリア「まだ時間がかかるからねえ」
そう言うと、紫の老婆は人混みに消えていった。
まだ時間がかかるからねえ。
船の話だと思うが、まるで俺が成長するのはってニュアンスも醸し出して……ああ、うぜえうぜえ。
ただ、あの老婆は北村憂の知り合いだ。
そうなると見方は変わる。
――オレに喧嘩ってんなら、覚悟は出来てんだろうな?
820円の男は闘志を燃やした。


