第十話『キチガイに刃物』4/5
◆【繁華街】
春樹「いーなー。入りたかったなー。おっぱいいいなー」
顔面あざだらけで、びっこを引きながら歩く少年はそう言った。
少年、に見える男の実年齢はとっくに成人している。
春樹(息吸うと痛いなー。あばらとか折れてるんだろうなー。いやー、すごいね。ボクシング漫画とかで肋が何本かいったかー。とかさらっとあるけど、うん。無理。腕もあがらないよコレ)
アドレナリンが出ていたのだろうか、じわじわと後になって痛みがましてきた。
近藤という男性に聞いたが情報量の多さから察するに薩摩さんはこの街にはいないのだろう。
春樹「……ん?」
路地裏ではあるが大型なラブホテル。
新築らしくキャンペーンの看板が立てられている。
キャッチ「お。学生さーん。濡れ濡れの人妻どう? 今だと早朝割あるよ?」
春樹「素晴らしいですけど、ちょっと今日持ち合わせがなくて……」
何度目かわからないキャッチをあしらう。
春樹「……」
改めて街を見渡す。
通行人の割には風俗店が多い気がするが、間違いではないだろう。
春樹「……少しは押されたと思ったけど、そんなことはないか」
IR――Integrated Resort。
日本語で言う統合型リゾートでなく、あくまでその中枢のCR。
CR。カジノリゾートの略称だ。
IRの主導権に手を伸ばしたのは営業の基本で、高めの球を投げただけだろう。見事カジノリゾートを掌握したWS社。
その代表取締役、キニーブラウン。
周囲に増える風俗店は関西最大手暴力団グループのものだろう。
カジノが成功するか否か。
その鍵はジャンケットの有無だと専門家が言うが二階堂春樹の見解は全く異なる。
海外の富裕層がふらりと来た時、100万円を超える税関申告の壁がある。
その時にVIPに対し、億単位の金を貸し付ける事――それは難しくはない。
問題は貸付ではなく"回収"だ。
そのためのジャンケットと言うが……、
この話。そもそも根幹が大きく間違っている。
カジノを開いて観光客から外貨を得る――というのは全て建前。
ターゲットは日本人だ。
パチンコという日本最大の既得権益にメスを入れたキニー・ブラウンに賛辞を送るものも少ないが結局は胴元が変わっただけ。
ただの役人が争う省益のカジノ利権の奪い合いだ。
オンラインカジノを一斉摘発を突如行った。
何故か。
外貨が流れる?
→ネットゲームランキングの半分以上が今や中国と韓国であり既に流れているのでこれは違う。
ギャンブルはそもそもダメだから?
→競馬、競艇、色々とあるのでそれも違う。
法律に反しているから
→日本国内の賭博はダメだと最高裁の判例はない。昭和時代に出来た法律を無理やり都合の良いように解釈しているだけにすぎない。
もちろん新らしい法律作ってオンラインカジノはダメだとすればいいが、それもしていないのに逮捕者を確保。よって法律が制定していない以上これも違う。
追記:法律の事言うならパチンコもね。
依存症が増えるから?
→もっともっと古から日本は世界で突出してギャンブル依存症が多い国。不思議だねえ。よってこれも違う。
"作法"がわからないから?
→これは――違うとは言えない。
パチンコ店は見回りの警察官に一度で百万円の裏金を渡す。ホールが警察への賄賂をするのだ。
そしてパチンコメーカーは国会議員への政治献金を行う。
製造と販売。両方で"作法"がわかっているパチンコに引き換え、オンラインカジノは作法がわからないので淘汰された――とも言えるが、実は競合に成り得ないので潰す意味はあまりない。
ではでは、オンラインカジノを一掃した本当の答えは?
春樹「利権」
そうなると――全力で潰しに来る。
競馬は農林水産省。
totoは文科省。
競艇は国交省。
競輪・オートは経産省。
パチンコは警察。
宝くじは総務省。
綺麗事を並べながら天下りの斡旋と癒着を行ってきた日本に、新たな利権。
カジノ産業。
こんな美味しい餌がぶら下がれば、全力で取りに来る。
キャッチ「おっぱいあるよーおっぱい。朝おっぱいだよー!」
そして纏わる風俗業。さらには回収する闇の住人達。
もっとも、この辺りを国がやれば名前が汚れるので、それを全て担ってくれる組織が必要だという事だ。
『万博で未来を』
そのキレイ事の裏で進め、クレームの窓口としてのスケープゴートにWS社。キニー・ブラウンの名前を使ったわけだ。
国が名前を汚さないためのWS社。
そしてWS社が名前を汚さない先が暴力団。
暴力団の先が、実績作りで捕まる末端の構成員。
春樹「あはは」
悪の奥の奥へと進むほど、大企業や団体と続き最後は国とどんどんキレイになるのだから、この国は面白い。


