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第七話『このハゲエエエエエエエエエエ』3/3

◆【屋上】
正明「ふぁーあ。よく寝たわ」
……ん?
そういやスケスケ最近見ねーよな。あいつ昼休み何してんだろ。
モチとスケスケは校舎が別だからここぐらいしか会わねーんだよな。
モチはオレがパチンコしてる間生意気にも出席日数稼いでいたらしく、絶賛ニート中として、んで今日はジャンもいないとなると……お

木葉「ふふん。よく来たわね正明!」
正明「ういっすー」
ガキの頃やってたゲームの中ボスってこういう態度だよな。
正明「ここ屋上な。木葉の部屋じゃねーから」
木葉「あたしの学園なんだから間違えてないわよ」
そうすか。

付けたばっかのタバコだったが、木葉が弁当箱を開けたので火を消した。
正明「木葉ちゃん、飲み物ありますか? できればミルクティーが飲みたいです」
木葉「……」
正明「んだよ。冗談だろ冗談。そんなマジな顔するなよ」
正明「つーかここに自販機作ろうぜ。木葉って偉いんだろ」

それじゃあ昼にしますかとコチラも負けじとクリームパンと三色弁当を隣に置く。
うおお、クリームパンだ。クリームパン! ガムじゃない食事だ!

正明「うお、うっま! やっぱ美味え! 人間の食事美味え!」
やっぱ飯は学園だな。カロリーを摂取できるのは素晴らしい。
木葉「ふふん。やるじゃない」
あん?
正明「……」
ほう。なるほど。流石風雪木葉。金持ちだけあって良い目をしている。
正明「うん。もぐもぐ、もぐもぐ、って噛むたんびに口の中にクリームの旨味がふわ~って優しく染み込んで、喉を通る時に身体全体の幸福感が……」
木葉「うるさいわね。いきなり何よ」
正明「あん? オレの食レポが聞きたいんじゃねーのかよ」
木葉「あんたみたいなつまんない人間の食レポなんて聞きたくないわよ」
正明「……ッ」
ダメよ正明! ここで手を出しては敗北を認めるようなものなのよ!
木葉「ふん。朝の話よ。あんたの事だから、あんなのでもお礼を言うと思っていたわ」
はあ? 朝? お礼……?
実際木葉には飯とか遊びとか色々おこぼれを恵んでもらっているが……。

正明「……?」
だが今朝に関しては何もない。
木葉「あんたはわからないと思うけど、WSOPはあたしの主催する大会よ。書いてある通り優勝したら全額もらっていいわ」
木葉「もちろんあんたもチケットを使って参加している以上その権利はあるわ」
木葉「ふん。もっと食いつくと思ったけど、以外に冷静じゃない。ちょっと見直したわ」
正明「さっきから何の話ししてんだ?」
木葉「だからWSOPよ」
正明「ほーん。アレな、あれ」
よくわかんねーけど相槌打っとくか。

木葉「一応、チケットあげたんだから行事は付き合いなさいよ。この風雪木葉に同伴できるのよ。正明は幸せ者よ」
正明「奢りならいいぞ」
木葉「……?」
木葉「あんた……まさか、まだ見てないの?」
木葉「一応あれ、100万円以上の価値はあるわよ」
正明「は? 100渋沢?」
木葉「渋沢って誰よ。100万円よ」
木葉「優勝者が1億円総取りできるのよ。100名参加だから100万円は当然じゃない」
んん……?
なんかさっきから会話が噛み合ってねーな。
木葉「テキサスホールデムポーカー。日本じゃ馴染みはないからあんたが知らないのも無理ないわ。とにかく、その大会があるのよ」
ポーカーの大会……ほー。それは面白そうだな。興味あるわ。

木葉「あんたにも招待状送ったから、代わりに付き合いなさい。いいわね」
テキサス・ホールデムの大会……んん? そういやこの前モチがなんか言ってたか……。

正明「まさか賞金1億出るのかよ」
木葉「さっきからそう言っているじゃない」
正明「ッハ。あのな、そんな1億程度の大会で…………」
正明「……」
正明「…………」
木葉「なんか喋りなさいよ」

……え?
え???

億???
おくのほそ道???(錯乱)

木葉「まあいいわ。とにかく、あんたは当日参加決定ね。チケットあげたから、観光代わりにはなるわよ」
正明「なあ。チケットは郵送したのかよ?」
木葉「今朝あんたの下駄箱に入れたじゃない」
正明「……」

え? ええ?
賞金1億円の大会に参加できる100万円の高価なチケットを?
鍵もかかっていない誰でも開閉できる下駄箱に?

木葉「言っておくけ招待だから転売はダメよ」
正明「……」
下駄箱……下駄箱……。
あれ……下駄箱には三通ぐらいなんかあって……それは今……主のいない教室の中に……。

そうだ。三通って、あの時由美子ってヤツは先に帰ったから、実際には二人で、二通と……
あ、そういうことね。理解理解。

正明「うわああああああああああああああ!!!!!!!」
正明「お前そんな大事なもん……バカ! このバカ! チビ! 寸胴! バファローズ! 金髪!」
正明「違う! ごめんなさい木葉様! ありがとう! ありがとおおおおおおお!」
正明「愛してる! 愛しているよ木葉ちゃん!!!」
木葉「な、なによ急に……」
ざけんなよハゲ!!! オレの100万円……いや、オレの一億の道のりを……!

正明「ジャアアアアアアアアン!!!」
思いっきりドアを開けると容疑者の姿。
斬「……」
正明「……ッ」
問い詰めるより先に机の中を確認するが、そこには目的の代物はない。
斬「……」
無言で窓を開ける。
三回からの空気は冬の始まりを感じさせた。
斬「……」
スニーカーが、窓の縁を踏みつけるとゴム底がアルミサッシの表面をこすり、キュッと軽い音が鳴るのが聞こえた。
ぴょん、と軽快に窓に飛び移り落下した。
正明「このハゲエエエエエエエエエエエ!!!」

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