第四話『またオレ何かやっちゃいました?』3/4
シェフ「前菜は長野産アスパラガスと新潟産舞茸のバター炒めです」
正明「そうですか」
食欲を唆るバターの匂いが漂う。説明はないだろうが、多分このバターも良い物なんだろう。知らんけど。
シェフ「そのままでもお召し上がり頂けます。お好みでこちらのクリスタルロックをご堪能ください」
あー、はいはい。あれね。クリスタルロックね。
望代「クリスタルロックって……装備?」
そういうのちゃんと聞けるって偉いよな。
シェフ「こちらはパキスタン産の岩塩になっております」
あー、はいはい。あれね。パキスタン産の岩塩ね。いいよねあれ。
望代「……」
正明「……」
望代「なあ、エバラ黄金の……」
望代「……」(悲しそうな表情)
わかる。ちょーわかる。今だけはモチの気持ちちょーわかるわ。
目の前の鉄板からきちんと三等分され、それぞれの皿に振り分けられる。
正明(少ねえ……)
望代(野菜……)
よくわからないが、望代はその岩塩とやらを皿に置かれた料理に振りかける。
望代「……ん?」
が、落ちてこない。
正明「詰まってんだろ。貸してみろ」
木製の入れ物。爪楊枝で穴を押せば出るだろ……って、その爪楊枝がこういうところにはねーのか。
勢いよく上下に降ってみても落ちるように見えない。
レイナ「……?」
さて――果たして、クリスタルロックは目視できるのだろうか?
がんえん……岩塩。つーと恐らくは塩だろう。
クリスタルな塩ってことは、透明であろう。
それをまぶした。クリスタル故に透明。よって目視不可能――ってんなことあるかい!
或いは――本当に詰まっているか。
しかしここは高級店。そんなおざなりだろうか?
目視不可能か詰まりか。
考えられうる二者択一まで出揃ったが、ここで間違えると大恥をかくことに。
ならばここは――。
選択肢は出ない。チラリとモチを覗くと頷いた。
望代「詰まってるし!」
自信満々に言いやがった! こいつに乗ろう!
正明「あはは、これ詰まってますね!」
さり気なく自分の手の甲の上で降ってみるが、見えない何か降ってくるの感触はない。
よし! 正解!
正明「ま、全然いいんですけどね。気にしないでいいですよ」
さらに弱みにつけ込まず余裕を出す事で王者の風格を見せつける。
シェフ「……」
レイナ「……」
望代「ん、べ、別に大丈夫だし、バターだけでも……うまっ! うまっ! なにこれうまっ!」
レイナ「もしかしてこういうお店じゃなかった? てっきり地元だし常連さんなのかなーって」
え、これ煽り? 嫌味? 純粋な質問? え、あれ? わかんねえ。わかんねえけど、逃げ出してえ。
レイナ「あはは、いますよね。億万長者でもチェーン店のハンバーガーショップが大好きとか。あれはアレで美味しいんですけど、カロリーがね。レイナはダメなの」
オレ達の夕飯が賞味期限半年前のガム一枚って伝えたらどんな反応するだろうな。
レイナ「……」
レイナ「レイナもこの前初めて教えてもらったんですけど、このグラインダー……あ、胡椒だからペッパーミルか。これ回すんですよ。ほら! 出てきました!」
正明「おお! すげえ、クリスタルロック!」
望代「やべえ! クリスタルロック!」
皿の上にクリスタルロックが!
つーか回すんかーい!
正明「あー、はいはい。グライシンガーね。ヤクルトの。知ってる知ってる」
望与「ん。モチもペッパー君好きだったし」
ま、こいつも最近知ったとか言うし、きっとこの店そのものが貴族の嗜みなんだろう。
レイナ「……」
言葉を探るように、レイナを少し考えるために間を置いてから、
レイナ「あのー、質問いいですか。マーサーって、なんですか?」


