第三話『三流ホストと寸胴眉毛』3/3
女「風雪木葉ってなにあれ?」
……あーん?
ぐるん、と二人揃って首が向いた先には、喫茶店のテラス。
女「あの小さい子、学園長なんでしょ? 金持ちの娘って感じで態度悪いよねー」
女「チビが胸張って身長高く見せてるのとか超ウケるよねー」
女「私は凄いと思うなー。あの年齢でああいうのって、凄い人だなーって」
女「由美子頭悪すぎ。親が偉いだけのチビじゃん」
女「金髪のブロンド。美しい蒼い瞳」
女「それで寸胴で眉毛で風雪木葉さんでーす!」
女「ぎゃははは!」
木葉「――ッ」
正明「待て待て待て! 無言で標準合わせるなよ!」
女「ねえ、あの子供学園長様ってなんで前髪ホストと仲いいの?」
女「あいつキモ。自分の事かっこいいと思ってる残念さがマジでキモい」
女「えー、でも顔はいいと思うなー」
女「由美子あんた男のセンスヤバすぎ。将来ホストに貢ぐタイプだわ」
女「あー、わかるー! あいつ近くで見たらそうでもないって。雰囲気イケメンだよ。前髪とか」
女「ぎゃははは、わかるわかるー!」
女「なんかすぐキレるよねー」
女「あれもうキレ芸だよ」
女「あはは、すっげえつまんなーい!」
女「ぎゃはははは!」
正明「――鉛玉入ってる拳銃寄越せ」
木葉「持ってるならあたしが先に撃ってるわよ」
女「あの二人って気が合うんじゃない? 両方常識ないし下品だよね」
女「オレ様オレ様みたいなのがなんかもう、うわーって感じ?」
女「うーん、それがいいんだけどなー」
女「マジで由美子おめでたい~」
女「つーか、あいつらって凄い陰湿だよねー」
女「あー、わかるー。あのホストって陰湿そうな女好きだよねー」
女「陰湿金髪」
女「キャハハ! それ! マジでそれ! そういう陰湿と友達とかマジで陰湿ホスト!」
正明「……」
木葉「……」
軽くアップするように正明は数回ジャンプしてみせる。
木葉は指の骨をポキポキポキと鳴らして準備する。
正明「さて」
木葉「そうね」
アイコンタクトで頷く。
女「そうそうそう! 陰湿同士仲良い、みたいな」
女「キレ芸マン元カノも陰湿を具現化させた超メンヘラだし~」
女「キレ芸マン超ウケる。陰湿な仲間を吸い寄せる、三流ホストみたいな?」
女「ぎゃはははは!」
正明「じゃ、由美子ちゃんはスルーで」
木葉「わかったわ」
パンパン、と木葉が合図をすると突如現れる黒服。
女「え……」
女「あの、椅子……?」
テラスでお茶している女子生徒の横に無言で椅子が2つ足される。
正明「どもー。三流ホストでーす」
木葉「どもー。寸胴眉毛でーす」
女「ひぃ……!」
女「え、……あ」
黒服は外部から見えないように人の壁を作ると同時に陰湿金髪はダイナミック着席。
金髪は座ると同時にテーブルに両足を乗せ、メダルゲームのコイン落としの様に紅茶とケーキセットを地面に落とした。
対してタバコに火を点けると同時に女の子のスカートに上に灰を落とす陰湿ホスト。
女「ひぃぃぃ……!」
女「あ……ああ……」
正明「おいおいおい、見てこれ。チビのくせに態度悪いよねー。面白い眉毛しやがってマジウケるよねー」
木葉「正明。あんたがタバコ吸ってるのってただのナルシストでしょ? かっこいいと思ってるのよこの陰湿ホスト」
女「……」
女「……」
もちろんこいつらはうちの生徒。前情報だけで99%だったが着ている制服で確定した。
正明「由美子って誰?」
由美子「あ、は、はい……」
木葉「お前は由美子?」
はいって返事してんじゃん。
ポンポン、と両側から肩を叩かれると、木葉から渋沢様数枚が。正明から丸ばつ製麺のクーポンを渡される。
木葉「これで美味しい物でも食べなさい」
正明「かしわがオススメだが、オレはあえてレンコンを勧める」
二人で親指を立てると、由美子ちゃんは黒服に連れられ帰っていった。
正明「ん? どうした黙って? 陰湿な学園長の陰口大会するんだろ。混ぜてくれよ」
木葉「前にあたしにつっかかってきたバカがいたのよ。その子の父親が翌日リストラされた話をしてあげるわ」
正明「えー、なになに楽しそー。すげー陰湿ー」
正明「なあ?」
女「…………………………」
女「…………………………」
正明「すみませーん。ここ閉店何時ですかー? あ、0時。うん! ありがとうございますー! まだ時間たっぷりありますねー」
木葉「この店のケーキを30分毎に出しなさい。気にしないでいいわ。もちろんこの寸胴眉毛の奢りよ」
女「そ、あの……」
木葉「――ちなみに」
発言権があるのは、あくまでコチラ側。
木葉「あたしは今までの人生で、好意を踏みにじられたことは一度もないわ。もしもそうなったらどんな感情を抱くかわからないわね」
正明「わー! ケーキ奢ってくれるんだってー! うっれっしっい~!」
女「……」
女「……」
木葉「ねえ、こういうケースって次のお約束ってなによ」
正明「そりゃあれだろ。あたしの彼は裏社会のドンと繋がってるのよっ!」
木葉「なんであたしの真似で表現するのよ」
木葉「って全然似てないわッ!」
伝わってるじゃん!
木葉「でもいいわね。そういうの居るなら是非見たいわ。ほら。後ろにあたしの兵隊いるでしょ」
木葉「ハリボテも多いけど中には元軍人や格闘経験者もいるわ。裏社会のドムなら運がよければ勝てるかもしれないわ」
ドムじゃなくてドンな。まあオレも自分で言ってよくわかんねーけど。
正明「ちなみにそれに勝ったらどうなんのよ」
木葉「家族が何故かリストラになるのよ」
正明「ヒヒヒヒ、うひょー。陰湿~」
女「……」
女「……」
ドム!!! とテーブルを強く叩く。
正明「黙り込んじゃねーよカス!!! 日本語わかんねーのかブサイクな顔しやがって!!!」
女「ヒぃ……!」
女「あ、あの……!」
正明「は? てめえ今オレに意見言った? 言ったてめえ糞ブス!!! なあ!!!」
そして、女相手に拳を振り上げると途端に女子生徒は目をつむって尻もちをついた。
正明「なんちゃってー。キレ芸でしたー」
木葉「あはははは! いいわね。正明にしては面白かったわ」
正明「ははははは!」
正明「ははっ……」
正明「……」
"正明にしては"面白かったわ。
正明「……」
あ、あれ? オレ、傷ついている……?
木葉「正明、あんた今日19時まで遊べるって言ってたわよね」
正明「あー、予定変わった。オレ0時まで暇になったわ」
木葉「奇遇ね、あたしもよ」
木葉「まずはドリンクオーダーしましょう」
木葉「会計は気にしないでいいわ。時間はたっぷりあるわ」
その日は木葉と楽しい一時を過ごした。


