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第18話 七度目の刃

第1章 死に戻り地獄の序章


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 ――6回死んだ。
 腹を裂かれ、喉を貫かれ、眼球を潰され、
脳を掴まれ、内臓を吸われ、心臓を抜かれた。

 どれもが、“確実に死ぬ”ための死だった。
 無駄ではない。すべてが“読み”となり、“道”となる。

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 タタルは今、7回目の戦いに立っていた。

 場所は変えた。
 司祭塔ではなく、拠点南部・祈祷室。
 石像と柱が林立し、見通しは悪い。
 だが、逆に言えば、“眼球”の飛来軌道を限定できる。

(あの魔物の眼球は、周囲の死角に逃げる。なら、死角を潰してやる)

 タタルは柱に鏡片を貼り付けていた。
 どの方向から飛んでも、必ず“目に光が反射する”ように。

 さらに火薬球を3つ、腰に装備。
 今回は、逃がさない。

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 魔物が現れる。
 レイヴァンの皮をまとった異形。
 眼球がすでに3つ、顔の下で脈動していた。

「また?来たのか。学ばねぇな」

 「学んでるさ。6回分、全部な」

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 開戦。

 魔物の身体が膨張し、刃のような腕が生成される。
 だが、タタルは後退しない。

 右手の火薬球を投擲。

 ボンッ!

 爆風で視界が歪む中、1つ目の眼球が飛び出す。
 その方向――右後方の柱影。

 すでにそこに鏡がある。

 ピカーッ!

 反射光。
 眼球が反応して一瞬停止。

 そこを狙って、タタルの投げナイフが突き刺さる。

 グチャッ!

 1つ目、破壊。

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「ギギィィィィィアア!!」

 魔物が咆哮。
 2つ目の眼球が飛び出す。だが、軌道が直線。
 焦ってる。

 タタルは踏み込み、火薬球を地面に叩きつけた。

 ドンッ!!

 爆煙の中、敵の再生器官が露出。
 今だ。

 「――終わりだッ!!」

 タタルの剣が、
 再生核を守っていた“仮骨”を砕き――

 ズシャァアッッ!!

 魔物の胸を貫く。

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 脈動が止まる。
 再生が、止まった。
 眼球が、動かない。

 ついに、倒した。

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 (ようやく……勝てた)

 タタルは剣を引き抜き、崩れ落ちる肉塊を見下ろした。

 死んだ回数、6回。
 殺された部位、合計12箇所。
 使った火薬、鏡、戦術、全部が1回分の勝利に集約された。

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 だが、そのとき。

 足元が崩れた。

 魔物の最期の反射神経で、床下の仕掛けを破壊していた。

 「――ッ!」

 タタルの身体が、地下通路へと落ちていく。

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 その途中。
 背中から鋭利な突起に貫かれる。

 ゴキュッ。

 肺が破れる音。
 血が口から泡となって吹き出す。

 死ぬ。

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 カチ。

 ロード音。

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 戻ったのは――
 今回の戦いが始まる直前。

 それでも、タタルは笑った。

 「また死んだ。でも、もうやり方はわかってる」

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 7度目の刃は、次の一手へと繋がる。

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