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第17話 一度では殺せない敵

第1章 死に戻り地獄の序章


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 1度目の死──咽喉を裂かれて死亡。
 2度目の死──頭蓋に眼球を押し込まれ、脳を破壊されて死亡。
 3度目の死──下顎を外され、喉から胸へかけて引き裂かれて死亡。

 タタルは、すでにこの敵に3度殺されていた。

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「……笑えよ、“死に戻りの英雄”。
 何度死んでも、お前は戻ってくるんだろ?」

 魔物は“レイヴァン”の顔で笑った。
 だがその顔は、もう仮面のようだった。
 裂け目から覗く黒い筋肉。
 歯が人間のものではない、“食らうため”の構造だった。

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 タタルは4度目の戦いに挑んでいた。

 背中にはロープ。足には小型の火薬球。
 そして手には、魔物の“眼球”を模した自作の模型。

(この敵の核心は、あの動く眼球だ。
 再生器官に指令を出してるのは、あれだ。
 つまり──“目を潰せば、回復しない”)

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 魔物が跳躍する。
 その速度は前回と違った。
 タタルは数秒で気づく。

(“学習”してやがる……!)

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 左斜めから襲う爪。
 通常なら背中を引く場面だが、今回はあえて前に踏み込む。

 敵の眼球が飛び出した。
 予測通り、空中に浮く“独立眼球”。

 そこへ、タタルが放ったのは――

 火薬球。

 ボンッ!!

 爆音。
 火花と爆風が眼球を巻き込んだ。

 「グギイィィィィアアアアアアアアア!!」

 魔物が悲鳴を上げた。
 音ではない。鼓膜に直接響く“絶叫”だった。

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 しかし次の瞬間、魔物の身体からもう1つ眼球が生まれた。

「……チートかよ……」

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 タタルは知る。
 この敵を倒すには、“最低3つ以上の死を積まなければならない”。

 眼球の数。
 再生周期。
 そして最終形態。

 どれも、初見では対応できない。

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 敵が跳びかかる。
 爪が肩に突き刺さる。
 骨が砕ける音。

「っっが……!」

 剣を振るう。
 首を狙うが、再生された筋肉が刃を止める。

 敵の腕が広がる。

 視界が、倒れる。

 頭を、砕かれた。

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 カチ。

 ロード音。
 視界が反転する。

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 タタルは、4度目の敗北から戻った。

 「……次は、目を3つ潰す。連続で、確実に」

 戦術は研ぎ澄まされる。
 戦意は削れても、記憶は武器になる。

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 (殺すまで、あと何度死ぬ?)

 (……いや、もう数える意味もない)

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 タタルは、また立つ。
 死を、当たり前の戦術として。

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