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迷惑な話

「俺、お前に確かめたいことがあるんだ」
「なんだよ、改まって? バイトの休みに急に呼び出して、真剣な顔しちゃってさ。まさか、やめてくれよ。俺、ノーマルだから。差別する気はないけど、そっちの趣味はないからな」
「おいおい、勘違いするなよ。すごく真面目な話だから。茶化すな」
「真面目な話? なら、もったいぶらずにさっさと言えよ」
「もったいぶっているつもりはない。お前が茶化して、話が進まないだけだろ」
「はいはい、悪かったな茶化して。けど、休みの日に急に呼び出されて不機嫌な、こっちの身にもなってくれよ」
「呼び出したのが、男の俺で悪かったな」
「ああ、悪いぜ。これで、大した話じゃなかったら、マジで縁を切るぞ」
「大丈夫だ、そんなに退屈な話じゃない。いや、残念だが笑えるような話でもない」
「随分と、脅かすじゃねぇか。なんだよ、真面目な話って」
「お前、ネットに小説を投稿してるだろ、しかも、ホラー」
「ん、お前に俺の趣味の話なんかしたっけ?」
「お前から聞いたんじゃない、自分で調べたんだ。ペンネームで投稿してるけど、プロフィールに生年月日や何県に住んでいるとか公開してただろ、そこから辿ってお前に辿り着いたんだ。そういうのプロじゃないから苦労したぜ」
「ということは、きさらぎ駅の件だな」
「ああ、そうさ。あれ、お前の書き込みだろ?」
「また、あの書き込みを信じて知人がきさらぎ駅を探しに行って行方不明になったって、話か。いい加減にしてほしいな、あれは俺の書き込みじゃないし、実在しない駅を探しに土地勘のない奴がど田舎に行って帰って来れない責任を俺に押し付けられても困る」
「お前じゃない? けど、お前の文章に似てるって奴が何人かお前の元に来たんだろ?」
「ああ、そうさ。本当に似てるだけで、こっちは大迷惑さ」
「お前、本当に関係ないのか」
「ああ、あの書き込みは俺じゃない。嘘じゃないから困ってるんだ。だいたい、もしあれが俺の書き込みなら、俺が書き込んだ原作者だと名乗り出て、どこかに出版してもらうように頼むさ」
「じゃ、あ、あれは、誰の書き込みなんだ」
「誰がきさらぎ駅を信じて行方不明になったか知らないけど、俺は本当に関係ない」
「う、嘘つくな」
「たく、しこい! 死ね」
「がっ、いっ、く、くるしぃ・・・」
「たく、俺が関係ないと言っても信じずに逆上して襲ってくる奴が多いから、こうして、こっちも自衛しなくちゃいけなくなる。たく、死体処理って面倒臭いんだぞ」
「・・・」
「死んだか。たく、これで何人目だ。本当に迷惑な話だ」

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