バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

第十三話『フィッシュではなくスリーセブン(後半)』7/7

◆【WENSCASINO】
男性1「ちょーウケる。こんなに笑ったの久しぶり」
男性2「あのイキリナルシストマジでザマア」
男性3「しっかしあの程度の腕でよくこの店来れたよな」
ラシェル「……」

話題になっているのは先程勝負をした正明のリアクション。
ラシェルのブラフにチップを叩きつけ、その後じわじわ削れて、最後にオールイン対決で負けると奇声を発する。

男性2「がああああああ!」
男性1「ひゃはははは! 似てる似てる!」
男性3「やー、また来てくれねえかなスリーセブン」
決着がついた直後。いきなり殴りかかろうとしたところを同伴していた小さな少年に止められて、すぐに帰っていった。
ディーラー「流石ラシェルさんです。あんなのとはやっぱり格が違いますね!」
ラシェル「……」
テキサス・ホールデムに限ってはその通り。
入門書を買う素人らしく、稚拙な打ち方。
ブラフに引っかかり損切りできないまま無様に敗北した。

――その後だ。

男性2「ふざけんな馬鹿野郎!」
男性1「ひゃはははは!」
ラシェル「……」
そう。負けて怒る底辺に相応しいリアクション。

あの憤りは――"作られたもの"。
奇声も。短気も。憤怒も。
全てが偽物。
ディーラー「フィッシュらしく美味しく食べられて、はは、本当に気持ちがいいですね!」
ラシェル「全然」
ディーラー「え?」
足りない。
まるで足りない。尻尾の先を一口噛じっただけだ。

怒り狂っている演技。あいつはまだまだ資金があった。切羽詰まったリアクションじゃない。もっともっと絞れた。
男性3「あいつどこでポーカーしてるんだろう。マジで誰か知らない?」
男性1「あー、いいね。苛めにいこうぜ。ポーカーならこっちが先輩だ」
そう。この反応だ。
ラシェル「……」
序盤からずっと仕掛けてきた"ピュアブラフ"。

「ブラフだとわかってくれ」とブラフをかけた張本人が見せるアクションの意味。
それに何の意味があるのかというと、本命の手が入った時に「またブラフだろ」と油断させて刈り取ることが目的。
当たり前だが強い手しか勝負しないプレイヤーは当然警戒される。その反対で自分を弱く見せる手法だ。
それを序盤からずっと繰り返し、全て看破して相応の額を絞ったと思ったが――。

チッ……。
ここでお魚君をバカにしている何人かはきっと食われるだろう。
駆け引きをテーブル外に持ち込めるプレイヤー。
なるほどね。ポーカーではド素人だけどギャンブラーとしては少しだけ心得があるみたいだね。

ラシェル「――ねえ。あいつの名前教えてよ」

しおり