第四話『全ての骸に祝福を――』2/2
望代「なあ。聞こえねえか? お前女の子遊びに来て何も出さないの?」
望代「クソ原って資本主義だろ? 家賃払ったし。一年間飯出せよ」
正明「……」
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●【選択肢015:貧乏神の対処法】
A.ボコボコにして外に捨てる
B.そのための激辛ラーメン!
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●A.ボコボコにして外に捨てる
正明「実はさ。オレこれでも現代人なわけで。すげー意外かもしれねーけど」
正明「キレやすいんだわ――」
宣戦布告の途中で手刀を打ち込む。
狙いは喉。まずは声を封じる!
正明「あぎゃああああああああ!」
望代「クフフフ……げほっ、ごえ。クフ、フ……こ、こんなこともあろうかと……おっえ!」
正明「あんぎゃああああ! 痛い痛い痛い!」
マフラーの中になにか仕込んでいる!
種明かしをするように、中から剣山を置く。
こいつマジかよ……剣山系女子かよ……。
望代「クソ原……これが…ゴホッ、ゴフッ!」
望代「これ、が…最後のチャンスだ……」
正明「ずっとピンチだよバカ!」
望代「モチの言うこと聞かないなら……警察呼ぶぞ! いいのかよ!」
ッハ……。
この、さ。警察呼ぶだの弁護士呼ぶだのでオレが怯むとでも思ってんのかこのチビ。
正明「上等だカス! 自衛隊でも特殊部隊でもなんでも呼べ! オレは絶対に許さんぞ!」
望代「戦うことでしか、分かり合えないのね……」
正明「てめえそれ言いてえだけだろうが!」
望代「……」
ふー、とゆっくり息を吐いて、喉の調整を始める。
望代「あー。あー。あー」
喉の調子OK! とでも思っているのだろう。
正明「……」
望代「ん」
さあ。始まる。
すぅ~っとゆっくり息を溜めて……。
望代「きゃあああああああああああ! 助けてえええええええええええええええ!」
がたん! と隣の部屋から待ってましたと腰を上げる音が聞こえた。
ッハ――上等だクソチビが!
不幸にも交番が近いこの家。それでも前回は3分は粘れた。ってことは、3分間はフルスイングパンチできるボーナスゲーム!!!
警察「おらあ警察だ!」
警察「おとなしくしろ!」
正明「用意周到だなおい!!!」
入り口と窓から同時に侵入してくると、台所の窓から走って出向く。
警察「どうしましたか!?」
望代「あのぉ、知らない人が、いきなり私を襲ってきて……」
正明「ここはオレのYEAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAH!!!(家)」
せめてもの足掻きとして皿を投げつけてやろうと振りかぶるが……。
正明「くそ……これ高いヤツだ。100円の、100円皿があったろ……!」
望代「ざっこ」
警察「確保!」
正明「させるかボケぇ!」
長い長いマラソンを裸足で制した後は、僅かな食料を奪われた荒らされた部屋だけだった。
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●B.そのための激辛ラーメン!
正明「チッ……ま、わかったよ」
正明「飯ぐらいは出してやる。これ食ったら帰れよ」
望代「偉そうにしてカップラーメンかよ」
ヒヒヒ! バーカバーカ! お前はこれから朝までコンビニのトイレに籠城するんだよ!
その辺はぬかりない。
見た目は普通のちょい辛ラーメン。しかし中身はタバスコと唐辛子とコーレーグースとわさびの融合。攻撃力9999の毒物に入れ替えてある。
まるで今封を切ったかのような演出をして、目に飛び込むのはその異様な色。
赤と緑と赤と赤と赤と赤と赤。
あかん。あかんでこれは……。
一応こんなのでも顔見知りだ。食ったら死ぬ可能性もある。
……。
選択肢はない。駆除あるのみ。
望代「お前最近なにしてたんだよ」
正明「そらもう新しい女作って毎日セックスよ」
望代「くふふ。短小チ●コで性欲あるとかモンスターだし」
望代「間違えた。お前チワワだったな。くふふふ」
こいつは天才だ。人を煽り、バカにして、仕掛けさせる天才カウンターパンチャーだ。誘いに乗ってはいけない。
ここは冷静に……基本だ。基本。基本に忠実に、ラーメンを食べさせ毒殺。これが最短ルートだ。
望代「ん? ハゲとヤッてんのか」
正明「このオレとあんなハゲが釣り合うわけねーだろ」
望代「くふふ。クソ原なら10年後ピッタリになりそう」
望代「お前の前髪って……」
望代「……」
望代「くふふ」
ギッ……ッ!
殺すな……殴るな……動くな……!
オレの手が汚れる……こんな、こんなゴキブリ女を、オレの手で潰したら汚れる……落ち着け、落ち着け……ッ!
ゆっくりと、お湯に満ちたスープを溶かす。
スープを溶かすって何言ってんだって思うじゃん? マジでこの赤の固まりがなんなんだって話で……。
うわ、すっげえこれ。湯気でもう、むせる……ッ!
正明「うーし、できたぞー」
笑顔で振り返ると――。
望代「一発げーーーーい」
望代「ドリフ!」
バチャーーーン!
正明「ほげええええええええええ!」
カップラーメンを無理やり顔面に叩きつけられ殺虫剤をかけられたゴキブリのようにのたうちまわる。
正明「ぎゃあああああああああ! ぎゃあああああああああああああああああああ!」
望代「くふッ!」
なんで、こいつ、いきなり……ぐあ、ひ、ひぃ!
正明「がああああ! があああああああ!」
望代「ふ、ふえぇ……」
望代「だ、大丈夫ですかぁ……?」
殺す――!!!
幾度となく決めた殺意。胸に秘めたこの憎悪。
その全てが掻き消えるほどに、目の前のクソ女は別格だった。
望代「喉乾いちゃったの? ふぇ? コレを飲むんだぽにょ」
正明「あぎゃあああああああああああああああ!!!!」
望代「くふふ、キヒヒ……ぐふふふふふ……!」
心行く迄悶えるイケメンを視姦 (しかん)し、台所に去って行った。
正明「あぎぎぎぎぎぎぎぎ……」
待て、助けろ、許さん、殺す、殺して、助けんかい!
と思えば何事もないように戻ってきた。
その手には何か持っているように見えるが……違う。タオルじゃない。まず水、いや、風呂だ。もう皮膚が溶けそうで……。
望代「じゃーん」
『超強力絶滅殺虫剤in中国産』これを左手に。
正明「待って……」
頭を使わないで、心の奥の声が漏れたのが自分でもわかった。
望代「じゃじゃーん」
そしてオレのテーブルに置かれていたライターを右手に。
正明「待ってよぉ……」
正明「オレ、モチの事本当に好きで、愛していて、毎日寝る前にモチの事だけを考えてたのに……」
シャ、シャ、シュボ。とライターから小さな炎が灯る。
違う! こんなのでこいつは揺らがない。もっと、もっと別の褒めて嬉しいポイントを……!
いや、でも辛い……目が痛い、クソ、クソ……モチ、モチが喜ぶかつこいつの良いところ……!
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●【選択肢016:鏡望代の良いところ!】
A.身体だ!
B.洋服だ!
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●A.身体だ!
正明「お前ってほら、胸ないけど感度いいしさ。すぐ濡れるじゃん!」
正明「鳴き声もかわいいし。今日も正直モチと寝れるんだって期待して……」
正明「チビで黒髪だしさ! お前性格も態度も口も最悪だけど、ほら男はそんなのどうでもいいから! お前みたいなの付き合うとか吐き気するけど、ヤルだけなら超嬉しいし!」
正明「えと……そう! 締りいいもんな!」
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●B.洋服だ!
正明「モチってさ、服かわいいじゃん。あのあれ。なんつーの。ゴスロリ風? なんかそういうフリフリしてるの」
正明「それでそのフリフリとかリボンとか、えーっと、あー……ああああああああ! 話が繋がらねえええええええ!」
正明「オレ正直に言ってな! てめえのセンスねえって思ってんだよ女版スケスケがっ!」
正明「横に連れて歩いているだけで恥ずかしいんだよ! クソみたいなアニメキャラのTシャツやらキモオタに媚びたメンヘラ衣装が!」
正明「バカヤロウ! ちゃんとこのゴミを褒めろよ! 違うゴミじゃない」(錯乱)
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△【イベントCG023・魔界に出流紅き混沌よ】
望代「……」
望代「この世界線も……ここまでのようね……」
厨二病界隈で世界線流行ってんなぁ!
望代「魔界に出流紅き混沌よ。我が魔力を下に絶景の世界を創り出せ――」
シュボボボボボ! 火力を最大にして縦にながーーーーく伸びる。
正明「待って待って待って待って! 色々間違えたの!」
正明「今日は! 今日は頭働いてないの! 疲れてるの! マジでやめて! やめてください!」
望代「全ての骸に祝福を――モチフレイム」
正明「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!」