第四話『全ての骸に祝福を――』1/2
◆【自宅玄関】
正明「たーだいまっと」
木葉の絡みにおっぱいのバカにバイトの初日に、今日は色々あったな。
あー、今日も飯がねえ。
頭働かねーし、シャワー浴びて寝るか……。
ガチャン。
△【イベントCG002・チェーンからカツ丼を伺う望代】
正明「……」
主の帰宅を拒絶するドア。
鍵はかかっていた。なので泥棒の心配はない。
問題は銀色のチェーン。
正明「……おい」
おい、これ前にもあったぞ。
働かない頭をフル回転させる。
正明「……」
残念ながら可能性は一つしかない。
アレだ。
考えうる最悪のケース。
正明「ぶっ殺すぞクソメンヘラあああああああああああああ!!!」
叫ぶと同時に奥でガラガラと崩れる音がした。
それからしばらくして。
望代「おいウジ虫。お前今何時だと思ってんの? いきなり大声とか常識ないし」
正明「……」
この顔を見るだけで酸素が薄くなる。
正明「オレ今日マジで疲れてるんだけど」
望代「は? モチが知るかよ」
金属バット。金属バットないかなー金属バット。オレが動けなくなるまでこいつの頭をフルスイングし続けるんだ~。
望代「くふふ。そうカッカするなし」
どうしたらこんなムカつく顔できるんだろうな。っていうか相変わらず笑い方キモいな。
望代「竹原と喧嘩しにきたんじゃないし。今開けてやる」
え、なんでこいつこんなに偉そうなの。マジでぶっ殺していいの?
ドアが閉まって、がちゃがちゃとチェーンを外す音が聞こえる。
望代「空いたし」
力任せにドアを引っ張ると、一本の鎖で阻まれた。
望代「うっそーん」
正明「ぷわあああああああああああああ!!!」
もう殺す! なにしてんのこいつ人の家で! 色んな奴居るけどこいつが別格にムカつくの!!!
望代「今開けたら~、モッチーにひどいこと……するぅ?」
正明「しゅるうぅ!!! 膝蹴りしてジャイアントスイングするぅ!!! 眼球にたばしゅこ入れりゅうううう!!!」
望代「おい、ちょっとは隠せよ」
正明「今日マジで疲れてるんだよ!」
お隣さん「……」
出たよ。出やがったよ。
望代「受け取れよ」
小さな声で僅かな隙間から出してきたのは――五千円札。
望代「竹原お金好きだろ? な?」
正明「……」
何が目的かわからない。目的はわからないが、少なくともこの五千円でやりたい放題するのは目に見えている。
望代「野宿するか、モチの家賃受け取るか選べよ」
選択肢はない以上、こいつの提案を受け入れるしか……。
正明「家賃……?」
望代「ん」
当たり前のように頷く。
望代「仲良くしようぜ」
こいつと? 仲良く? はあ? つーかマジで住むつもりかよ?
しかし人間不思議なもので、目の前にお札を出されると無条件で受け取ってしまう。
望代「ん。受け取ったなら入っていいぞ」
偉そうに中に案内されると(オレの家)リビングから椅子引いて(オレの椅子)座れと促す。
望代「なあ。最近どうよ?」
正明「……」
なんだその大学生に上がったばっかのカスみたいなフリ。
望代「言わなくてもわかるし。クソ原、モチがいなくて毎日寂しかったろ?」
正明「んーん。全然」
もう本当に。つーか居たのかっていうか、顔も見たくなかった。
望代「照れるなよ。こっちまで照れるし」
テレビの前のみんなに説明すると、こいつは都合の良い解釈をしているんじゃない。
こっちが一ミリも照れてないのを理解していて、尚都合の良い解釈で話を進めているだけ。
望代「う、ううう……」
望代「竹原に会えてよかった……本当に、この半年間、ずっと竹原に会いたかった……ううううう……」
望代「(チラ)」
正明「……」
望代「チッ……」
舌打ち聞こえてんぞ。
望代「はあ。もういいよめんどくせえ。腹減ったし。飯」
てめえこそもうちょっとぐらい隠せよ。