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第76話 揉める配役

 問題はかなめとカウラの配役だった。

 カウラの役は魔法少女姉妹の小夏の姉で誠の恋人の役だった。誠の設定ではアメリアがこの役をやると言うことでデザインした原画を描いたのだが、隊に来て車を降りたときにかなめがアメリアの首を絞めていたことから見て無理やりかなめがその役からアメリアを外させたのだろうと言うことは予想がついた。

 そしてかなめ。彼女は敵機械帝国の尖兵の機械魔女と言う設定だった。しかも彼女はなぜか失敗を責められて破棄されたところを誠二に助けられるという無茶な展開がえがかれていた。その唐突さにかなめは若干戸惑っていた。しかも初登場の時の衣装のデザインはかなりゴテゴテした服を着込むことになるのでかなめは明らかに嫌がっているのは今も画面を見て苦笑いを浮かべているのですぐにわかった。

「そうだ普通が一番だぞ、ベルガー。アタシは……なんだこの役」 

 仕事が一段落したのか、端末に目をやるランがそう言うのも無理は無かった。彼女自身、誠の原画を見てライバルの魔法少女の役になることは覚悟していたようだった。しかし自分のどう見ても『少女』と言うより『幼女』にしか見えない体型を気にしているランにとっては、その心の傷にからしを塗りこむような配役は不愉快以外の何モノでもないのだろう。

 魔法の国以前に機械帝国に侵略されて属国にされた国のお姫様。誠としては興味深いがランにとっては自分が姫様らしくないのを承知しているのでむずがゆい表情で時折かなめや誠、アメリアを眺めていた。

「じゃあ、とりあえずこの方向で行くからよろしく頼むわね」

 その時ようやく全員が台本を読み終えた様子を察したアメリアがけりがついたと言うように渋々首のジャックにコードを挿して作業を始めようとするかなめの肩を叩いて立ち去ろうとした。

「まあ……いいや。アタシはちょっと運行部の連中に焼きいれてくるわ……アメリア!オメーも来い!それとかえでとリンもどこかのトイレにいるだろうから回収してくる。アイツ等トイレで変態行為に及んでいる可能性がある。神聖な職場でそんなことをするような変態には折檻が必要だ!まあアイツ等はわざと私に折檻させる目的でそんな行為に励んでいる可能性はあるが……アタシとしても折檻はしたい!」 

 そう言って部屋を出ようとするかなめの纏う殺気に、誠とカウラはただならぬものを感じて立ち上がり手を伸ばした。アメリアはにこやかな笑みでにらみつけてくるかなめの前で黙って立ち尽くしていた。

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