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第55話 メインキャラを生かすために

「ここにいるとろくなことになりそうにないな。ちっちゃい姐御の気持ちが良く分かったぜ」 

 思い直すような表情で立ち上がるとかなめはそう言い残して出て行った。カウラは追った方がいいのかと視線をアメリアに送るが、アメリアは首を横に振った。そしてかなめが放置していった端末を覗いたルカは手でオーケーと言うサインを送っていた。たまたま息抜きに頭を上げていた誠はかなめがなんやかんや言いながら仕事をしていたことに思わず笑みを浮かべていた。

「菰田君!そっちの宣伝活動はどうよ」 

 アメリアがまず気になるのはサラの合体ロボの人気の状況だった。

「ええ、まあうちの方の宣伝は順調ですね。あちらもうちと同じでサラさんの絵を使ってキャラクターの設定を始めたみたいですけど俺から見ても神前の奴よりかなり下手ですね」 

「ちょっと見せて」 

 アメリアはすっかりこの部屋の指揮官として動き回っていた。誠は再び頭を上げた。さすがに集中力が尽きてアメリアが菰田の端末の画像を見て悪い笑いを浮かべるのを見ながら首を回して気分転換をしてみた。

 菰田の前の端末の画面には次々とサラデザインと思われる合体ロボお約束のパイロットスーツ姿の青少年や、敵キャラのデザインが映し出された。どれも誠のアシスタントをしているだけあって誠の絵柄とよく似ていたが、誠の見事なタッチに比べると劣化コピーと言う感じのものだった。

「これなら勝てるわね。どんな素人が見てもどっちが上手いかなんてすぐに分かるぐらい差が有るわ。それにサラの絵柄は誠ちゃんの女性的なタッチと違って少年向けの絵柄だから。遼北軍みたいに女性の多いところだと危なかったけど……東和軍は男性比率は80パーセント以上!逃げ切れるわよ」 

 アメリアはそう言って勝利を確信した。確かに彼女が『東和限定』と言う設定に持ち込んだ理由が良くわかってきた。遼北軍は70パーセント以上、外惑星のゲルパルトなどでも60パーセントは女性兵士、人工的に作られた兵士である『ラスト・バタリオン』で占められていた。そうなると明らかに男性読者がターゲットの誠の女性キャラの人気は落ちることになる。そうなればアメリアの思惑は大きく外れることになるところだった。

 アメリアと運行部での彼女の部下であるサラとパーラはその『ラスト・バタリオン』計画の産物だった。他にもカウラやかえでの部下の渡辺リンも同じように人工的にプラントで量産された人造女性兵士である。

 先の大戦で作られた人造兵士達は技術的な問題から女性兵士が多く、司法局の配属の『ラスト・バタリオン』の遺産達もほぼすべて女性だった。自らも『ラスト・バタリオン』であり、その考え方を知り尽くしているアメリアに不敵な笑みが浮かんだ。

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