第52話 加熱する選挙戦
「リアリズムとロマンの融合は難しいものなのよ。たとえば……」
「はい!お茶!」
演説を始めようとするアメリアの後頭部にかなめがポットをぶつけた。振り向いたアメリアだが、かなめはまるで知らないと言うように手を振るとテーブルにポットと急須などのお茶セットを置いた。
「まったくかなめちゃんはガサツなんだから。とりあえず先生に入れてあげて!甲武一のお姫様でもそれくらいできるでしょ?以前は一人暮らしして自炊してたくらいなんだから」
アメリアの視線の先には首をひねりながら小夏の役の魔法少女の服装を考えている誠がいた。
「そんなに根つめるなよ。アレだろアメリア。とりあえずキャラの画像を作ってそれで広報活動をして、その意見を反映させて本格的な設定を作るんだろ?」
そう言ったかなめの手をアメリアは握り締めた。
「かなめちゃん!あなたはやればできる子だったのね!そうよ、とりあえず魅力的なキャラをネットに上げて支持を集めるそれが目的」
そのまま号泣しそうなアメリアにくっつかれてかなめは気味悪そうな表情を浮かべる。カウラは黙ってお茶セットで茶を入れ始めた。
「それにしてもさっきのかえでちゃんの何気ない言葉は良いヒントになったわ。『エロチックな敵キャラ』確かに魅力的ね。誠ちゃん、かえでちゃんとリンちゃんのデザイン変更。かえでちゃんは鎧をへそ出しにしてリンちゃんのビキニアーマーはもっときわどいのに変更して」
アメリアは選挙戦に勝つための必勝の策を誠に授けた。
「アメリアさん。でも、日野少佐の役って男性か女性か明らかにしないキャラなんですよね?へそなんて出したら女性だって一発でバレますよ。それにリンさんのビキニアーマーはすでにかなりきわどいので……これ以上やったら市の担当者から怒られますよ」
誠はなんとか余計な作業を増やすまいと抵抗した。
「やるのよ。かえでちゃんが女性とバレる?別にいいじゃない。それにリンちゃんのは本当に大事な部分が隠れればそれで問題ないから。モザイクが必要なレベルになるとさすがにまずいけど。市の担当者も『これは芸術です!』と言えば分かってくれるわよ」
アメリアの言葉に迷いは無かった。誠は仕方なく、せっかく色まで指定し終えたかえでとリンのキャラの原画に手を伸ばした。