第九話『収穫なしという収穫有り』1/3
◆【六道組事務所】
ロク「西暮街でカジノのう。あるよ。大きいところじゃったらWENSCASINO……じゃったかのう」
正明「その言い方はロクさんの手下がやってる場所じゃねーんだ」
ロク「この街は博徒も盛んじゃのう。竹ちゃんも幾つか行ったことはあるじゃろ」
博徒(ばくと)……ヤクザ用語で、賭場って意味でいいよな?
ロク「聞いたよ。雀荘出禁にされたようじゃのう。パチンコもできない。ほっほ。竹ちゃんなんのために生きているんじゃ」
正明「ふん! 羨ましくなんてないんだからね!」
ロク「噂の外国人にやられているようじゃからのう」
やべえボケスルーしたよこのクソジジイ。
正明「待て。噂の外国人って……」
ロク「ラシェル・オンドリィじゃよ」
あー、前に雀荘の店長が言っていたあいつか。
……ロクさんまで話にするレベルか。
正明「そいつは何者なんだ?」
ロク「博徒を荒らしまくっている海外マフィアの博打代行と噂されているのう。怖いのう」
うるせえよ日本のマフィアが。
正明「……」
ロク「ま、遊びに行くならWENSCASINOならいいがの。もうちょっと待っておけ。一年ぐらいはゴタゴタが続くはずじゃ」
ロク「子供は知らなくてもいいことじゃのう」
正明「……」
こちらの質問を先に潰された以上、これ以上の会話はない。
さて……こうなると口を開かせるのが面倒だな。
ロク「竹ちゃん。彼女は元気かえ?」
なんだ藪から棒に。
正明「今女いねーよ。ふ。オレはイケメンだから困ってないけどな」
ロク「ま、じゃろうな」
その相槌はどっちの意味か。
ロク「ところで竹ちゃん、お金に困っているんじゃないかえ?」
正明「生憎オレはパチンコで勝ちまくってるからな。貯金だけで東京ドーム3つ分だわ」
普段は友達として接する、と言いながらもこのジジイは弱み見せたらこうやって合間合間に差し込んできやがる。
ロク「ワシからも大した情報得られんのう」
ロク「ほっほ。それで、どうするんじゃこれから」
挑発……いや、これは仕事の依頼か?
正明「受けねーけど言ってみろよ」
ロク「薩摩……」
ロク「……」
ロク「忘れた。ほっほ、パチンコ行ってくるかのう」
チッ……そーかよ。
正明「オレも帰るわ」
ロク「ほっほ」
収穫無し、っていう収穫を得た。