第三話『N=78』2/4
◆【駅】
くそ……クソがクソがクソがクソがああああ!!!
どいつもこいつも、やることなすこと……あああああああ!!!
死ねばいいのに! こんな世界壊れればいいのに! 金持ってこい!
カップル女「やーだぁ。むっくん超やさし~」
カップル男「当然だよのんちゃん。ボクの方が超幸せ~」
ピク。
カップル女「あーん、むっくんに吸い寄せられる~」
カップル男「当然だよのんちゃん。愛の波長だからね」
正明「……」
ゆら……。
まるで重力に引き寄せられるかのようにカップルの間に引き寄せられ……
正明「うおおおおおおおおお!」
カップル男女「ラリアットおおおお!」
正明「ぐはぁっ!?」
すぐに起き上がろうとしたところを女に蹴り入れられたが、なんとか体制を立て直した。
正明「なんて事をするんだ!」
カップル男「どの口で言っているんだ!」
正明「てめえらみたいなブサイクを視界に入れたこっちの気持ちも考えろよ!」
◆【公園】
くっそ、よりにもよってブーツで街を歩いたのも最悪だ。
あんな素人相手に撒くのに30分もかかった。しかも絶対靴擦れ。超痛い。いきなりラリアットとかなんなのあいつら? 修羅の国なの?
正明「……ううう」
クリーニングから降ろしたばかりのコートに、足跡。久しぶりに自分の惨めさに涙が浮かんできた。
何故だ? 何故清く正しく生きているこのオレがこんな目に合わなきゃならん?
世の中にはパパが石油王というだけで一生遊んでいるクソとか悪いことやって金もらってるクソがいっぱい居るというのに、何故オレはダメなのか?
正明「クソ、クソ、クソが……クソ共が!」
――が、欲しいか?
正明「ッ!?」
突如、謎の言葉が脳内に直接語りかけてきた。
――力が、欲しいか?
オレは、力が――!
●【選択肢007:力が、欲しいか――?】
A.欲しい!
B.いらんはカス金持ってこいボケぇ!
●A.欲しい!
――ならば受け取るがよい!
天から落ちてきた"ソレ"は――。
正明「……」
握力鍛えるやつ……あー、なんだっけこのニギニギするやつ。ハンドグリップ……だっけ?
恭介「鍛えよ」
正明「……ふ」
ニギニギする機械は夜の街に飛んでいった。
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●B.いらんはカス金持ってこいボケぇ!
正明「いらん」
恭介「答えよ」
正明「いらんってば」
恭介「ふむ……」
正明「……」
恭介「……」
恭介「時期尚早だったか」
そう言ってスケスケは森の中に入っていった。
恭介「望むのならば、己の足を進めよ」
正明「なんなんだよてめえ!」