第二話『西暮の日常と巡回』3/4
正明「しっかしバカ! 本当にバカ! 頭が悪すぎて同情するぐれーバカだなー! ヒヒヒ……ハーハッハハハハハッ!」
斬「マサ。陰口は良くない」
正明「ひゃははは! まーな! やっぱ悪口のほうがいいよな!」
正明「あーん、もうしゅんごい! 渋沢様が! こんなに渋沢様で溢れているでゲス!」
大学生1「……おい」
麻雀が終了してから一時間後。さっきの負け犬共の一人が現れた。
正明「おー、負け犬じゃねーか」
大学生1「……フ」
卓の上に並べてある渋沢を見て、男は微笑んだ。
斬「……」
近づいてくる男に臨戦態勢を取るジャンを手で静止させた。
正明「取り分だ。少し色付けといたぜ。マジで! マジでお前優秀!」
大学生1「へっへ、ありがとうございます! やっぱスリーセブンはちげーよ! 本当にすげーよ! 助かった!」
正明「まーな! イケメンだからな! ヒヒヒ!」
斬「……なるほど」
正明「また近いうちに連絡するぜ! そっちも何かあったらよろしくな!」
大学生1「おう! 絶対連絡してくれよな! オレからもするよ!」
金だけ受け取るとすぐにまた戻っていった。双方満面の笑みを浮かべながら。
と。完全に先程の学生が居なくなると正明から表情が消えた。
正明「……」
タバコに火を点けると、しばらく麻雀牌を弄びながら思考する。
思い返す、一瞬のやりとり。
助かった。彼はそう言った。
正明「……」
あれは――飼われてたな。
店長「お前みたいなガキが最近増えたな」
正明「あん?」
今まで沈黙を通していた店長がいきなり会話に入ってきた。
店長「実はいろいろあって、お前たちもう出禁にすることにした」
正明「は?」
斬「マサ。今すぐ謝って」
正明「いやいやいやいや、オレ今回何も悪いことしてねーだろ」
斬「ボクのことハゲって言った」
正明「それは謝りましたよ!」
店長「とにかく、だ。もうここでは打つな。いや、そもそももうこんな詐欺みてーなことするな」
正明「っは。言うじゃねーか。金貸しの賭博場提供者がこのオレに説教かよ」
店長「それだ」
あ?
店長「相手を見て喧嘩を売れ」
店長「お前みたいなガキ、こっちの気まぐれひとつでどうとでもなるんだぞ?」
正明「……」
●【選択肢006:説教されると怒れる年頃】
A.謝罪する
B.挑発する
●A.謝罪する
正明「すみません! 実はボク、女の前だから少し見栄張って心にもないことを言ってしまって……」
正明「ですからどうか! どうか! 今後も場所代に加えマージンも払いますし、店長様が望むのであればマージンの料金の追加も……」
店長「猿芝居はやめろ」
正明「チッ。うぜえ。なんなんだよいきなり」
斬「マサ。両極端は良くないと思う」
●B.挑発する
正明「やってみろよおっさん。てめえみたいな運動不足の中年が、勝てると思ってんのか?」
正明「この四光院斬に!」
斬「……はあ。はい」
店長「やらんわアホ。四光院ちゃんもそれしまって」
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店長「とにかく、今後はもうやめろ。今日居たガキ共も、お前らガキ共も家でおとなしくしておけ」
正明「知らねえ仲じゃねーし、理由ぐらい教えてくれてもいいんじゃねーの?」
店長「今この街に危ないヤツらがいるんだよ」
正明「六道組は前からいるんだろ」
店長「海外マフィア」
正明「ふーん。じゃあボクもうやめるね。そろばん塾の時間だ」
店長「やる気満々のとこ悪いが、もうお前らは出禁だと六道さんには連絡入れておく」
正明「はあ!? ざけんな!」
店長「ああ、仲間うちでやる分には見逃してやるよ。場所代は払えよ」
こいつ……!
店長「四光院ちゃん。このバカちゃんと首輪つけといてくれよ」
斬「善処します」
正明「チッ……わーったよ。オレだって危ないヤツとは関わりたくねえっつーの」
正明「マフィアとか暴力団とかそんな反社会の連中なんかと付き合いたくねえっつーの」
正明「だからせめて、オレみたいな小銭稼ぎしているヤツの名前だけ教えてくれよ」
正明「オレとかさっきのクソガキ共が、危ないから親切心で止めてくれたんだろ?」
店長「……」
しばらく考えた後、観念するように口を割った。
店長「いいか。この名前聞いたらすぐに帰れよ」
店長「ラシェル」
店長「ラシェル・オンドリィ」